-- DTM・パソコン音楽全般 --
私はDAWで音楽作品を製作するとき、早い段階からマスタバスにコプレッサ★1 とイコライザを差して作業します。以前は「ミックスダウンしてmp3ファイルにすれば完成」という段になってから差していましたが、それだとせっかく調整した楽器の音量バランスが狂ってしまって、また一からやり直しになってしまうのでした。
コンプレッサも早い段階で差す
マスタバスにコンプレッサを差す理由はもちろん、出来上がった音楽作品の音をできるだけ大きく★2 聞かせるためです。そういう目的のために使う専用のエフェクタ(リミッタ)も使っていますが……私の使い方が間違っているのか、これは3dBも抑えこむとビリビリ音が割れるのですよ。まあそんなですから、私はまずはコンプレッサで音量の凸凹をある程度ならして、その後でリミッタで限界まで音を大きくするようにしています。
コプレッサは音の大きさを変化させるエフェクタです。
音が大きかろうと小さかろうと曲の中身に違いはないでしょうから、コンプレッサを差したからといって曲が別物になって聞こえるようなことはないはずなのですが……なぜかマスタバスにコンプレッサを差すと、楽器の音量バランスが変わって聞こえます。それもかなり許しがたいほど。
ミックスダウン直前になってマスタバスにコンプレッサを差して、そのせいで楽器の音量バランスが変わってしまい、もう一度調整する羽目になる。この手戻りがいやになって、私は音楽作品を製作する早い段階で、マスタバスにコンプレッサを差すようにしています。ベース、ドラム、ギターなど主要な楽器の音が揃った時点で、マスタバスにコンプレッサを差します。
ベストなセッティングは今も工夫中
私がマスタバスに差しているコンプレッサはSonitus:compressorという、SONARのオマケです。
プリセットのセッティングそのままで、圧縮量が6.0~7.0dBになるように、その都度スレッショルドだけ調整します。こんなに押し潰して大丈夫なの?という不安はありますが、今のところ私の耳では不自然に聞こえないのでOKにしています。まあ圧縮量が大きいほど最終的な作品の音――厳密には音圧が大きくなりますから、圧縮するに超したことはないです。
圧縮量が6.0~7.0dBというセッティングは、もともとは事故です。ほんとうはもっと控えめに圧縮していたのですが、何をどう間違えたのか、気がついたらこんな極端なセッティングになっていました。慌てて正そうと思いましたが……少なくともそれまで気がつかなかったくらいには自然に聞こえていたわけです。おもしろ半分にそのまま使ってみたら、これがなかなかいい感じなのでした。失敗は発明の母、という言葉を実感しました。
これだけ圧縮していると、メインの楽器が休止するとその隙間を埋めるように、すっと伴奏の楽器が大きくなって聞こえます。これは私にとって、願ったり叶ったりな効果です。(あーひょっとしてこれが原因ですか?コンプレッサを差すと楽器の音量バランスが変わって聞こえるのは。)
★1 コンプレッサ
コンプレッサは昔のラジオ・スタジオで生まれたエフェクタです。コンプレッサは音が急に大きくなるのを防ぎます。例えばラジオ番組でパーソナリティとゲストが談話していて、不意に大声で笑ったとします。そのままだと音量オーバーで音がバリバリと割れて、聞き苦しい番組になってしまいます。コンプレッサは入力された音を監視していて、不意に音が大きくなると自動的にボリュームを絞り、音量オーバーになるのを防ぎます。音が小さくなるとボリュームを元に戻して再びよく聞こえるようにします。
どのくらい音が大きくなったら、どのくらいボリュームを絞るか。などというのは4つほど付いているツマミを回して調節するわけですが。誰が思いついたのか、極端なセッティングにするといろいろ予想外の効果が生まれるのでした。ピアノやギターの音がまるでオルガンのように聞こえたり、ドオォオオオオンと間延びしたドラムの音がドッ、ドッと鋭くタイトになったり。コンプレッサはセッティング次第でまるで正反対の効果さえ起こすような、応用範囲の広いカメレオンみたいなエフェクタです。
★2 音をできるだけ大きくする
音楽作品の音はできるだけ大きい方がいいです。単純にそっちの方がはっきり聞こえますし、大きい音ほど迫力がありますし。ならばと、上限ぎりぎりまで音を大きくしてmp3ファイルを作ったとしますよ。しかしながら、そうして作った自分の作品よりも、CDで聞くプロの作品は何倍も大きな音に聞こえるでしょう。念を押しますが、どちらも音量は最大です。これ以上、音を大きくすることはできません。無理に大きくするとバリバリと割れてしまいます。
プロの作品は音量が大きい、というより厳密には音圧が大きいのです。
分かりやすいイメージとして、静かなピアノ曲で、最後にガーンと一発だけものすごく大きな音が鳴るとします。これを録音して、最大まで音を大きくして音楽作品に仕上げたとしたらどうでしょうか。いちばん音の大きなところは?もちろん最後のガーンというところです。しかし最大音量の部分はたったのそこだけで、他の大部分は静かな小さな音の演奏です。どうにもよく聞こえない。かといって、これでもう最大まで音を大きくしているわけですから、これ以上音を大きくすることはできません。無理に大きくすると最後のガーンがバリバリと割れてしまいます。
これは言わば、最後に鳴る大きな音が邪魔になって全体の音を大きくできない、という状況です。コンプレッサはこの、邪魔になっている大きな音だけを選択的に小さくします。ほかの音はそのままにして邪魔になる大きな音だけを小さくする。そうやって全体的に小粒に揃えた(圧縮した)ところで、改めて最大まで音を大きくしたらどうでしょうか。なるほど、本来よりもずっと大きな音に聞こえるでしょう。その代わり相対的に、最後のガーンという音にインパクトがなくなってしまいますが……
音圧を上げるというのは、曲のメリハリやインパクトを犠牲にして音を大きく聞かせる技です。小さすぎて聞こえにくいのは論外ですが、まったくメリハリのない一本調子も困りもの。どのくらいメリハリを残してどこまで音圧を上げるか。このへんの話はそれだけで一冊の本になります。音圧を上げる技は知ってて損はない……いやDAWで音楽作品を製作するなら必須の知識です。ぜひぜひマスターしてください。
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