今日ならきっとコンサートピッチ
お店のウェブカタログの記載事項でずっと気がかり…いや正直に告白しましょう、後ろめたい記述がありました。
「この楽器はコンサートピッチです」
もちろん工房で電子チューナーを使って正確に調律した楽器のことですよ。「これはコンサートピッチですか」と問われればもちろん「Yes」と答える品質です。なのに、お客さんから「ピアノといっしょに演奏するんですっ」と言われたとたん、「きちんと合奏できますように」と祈るような気持ちになるのはなぜなのか…
これらの楽器は私の中で、コンサートピッチだけれどコンサートピッチじゃない、みたいな?なんと表現すればいいのか分からない、正確に説明する言葉を知らないものでした。そしてそれをそのまま開店当時からずっと放置してきて、「詐欺だ返品だ」「おまえの店はまっとうな楽器屋じゃない」という事態にこじれてしまいました。もちろん放っておいた私が悪いですよ、反省しています。
これに懲りて真剣に考えて、どうもコンサートピッチには2つの解釈があって、私はそれを混同しているのではないかと思い当たりました。
- 一年の寒暖を通じてコンサートピッチで演奏できる楽器
- 工房で調律したときの気温・湿度に限りコンサートピッチで演奏できる楽器
銀色のコンサートフルートは調律機構を持っていて、少々の環境変化に関係なくコンサートピッチに補正して演奏できます。しかし竹に穴を開けただけの笛ではどうしようもない。気温の上下に合わせてピッチもだらしなく上下します。では、世界中のすべての竹笛はコンサートピッチでないのか?もちろんそんなことはなくて、電子チューナーを使って正確に調律した笛は、そのときの工房の気温・湿度であればまちがいなくコンサートピッチで演奏できるのです。
ここに来て、私はやっと理解しました。
取引先の多くの工房が同様に書いてある奇妙な言い回し、
「この楽器は電子チューナーを使い正確に調律しました」
なんて分かりにくい言い方をするんだ、品質に自信があるなら「この楽器はコンサートピッチです」と胸を張ってはっきり言えばいいのに、と思ってましたが。こういう言い方しかできないのですね。「コンサートピッチの楽器だ」と言い切ると「気温・湿度に関係なくコンサートピッチで演奏できる」とも受けとれるので。
そう、それが答えでした。
風邪を治してから、すぐにでもウェブカタログぜんぶを見直します。
今回のトラブルで賢くなりました、得した。
楽器があればもっと楽しい毎日
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