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2013年01月23日

ソニーのイヤホンMDR-EX800ST

遅まきながら、ソニーミュージックからモニタリング・イヤホンが発売されていることを知り、速攻で入手しました。私はこれを普段用に使うつもりです。以前、他メーカーのイヤパッドでずっと音楽を聴いていて、耳の感覚をおかしくしたという経験があります。私は仕事上、耳の感覚がフラットでなければなりません。「普段に使える、業務用のヘッドホンと同等なイヤホンがあったらなあ」と常々望んでいたのでした。

業界標準というヘッドホン

MDR-CD900STはソニーミュージックが販売している業務用のモニタリング・ヘッドホンです。

もちろんソニーミュージックのスタジオでエンジニアたちがマジモンで仕事で使っている品です。MDR-CD900STで聞くCDの音はつまり、エンジニアたちが現場で聞いている音そのもの★1 です。

CDを製作したエンジニアたちはみんな、この音を聞いて、最終マスタリングにGOを出した、ということなのです。

MDR-CD900STはソニーミュージックのスタジオ以外の現場でも評価され、ついに業界標準と言われるようになりました。MDR-CD900STは発売された20年前から現在に至るまで何一つ変更が加わることなく、オーディオ業界のメートル原器★2 として在りつづけています。

みんな同じなのが重要

リスナーは自分が最高と信じている音で好きに音楽を聴けばいいですよ。
しかし、現場のエンジニアたちはそういうわけにはいきません。みんなで同じ音を聞いていなければ仕事になりません。例えば「CDの最初のマスタです。チェックをお願いします。」といって、試し焼きしたCDを出張先の責任者に送付したとします。このとき責任者が1,980円の玩具のようなイヤホンで聞いたとしたらどうでしょうか……彼がどんな評価を下すにしろ、参考にならないことは明らかです。

誰でも業界標準の音を聞くことができる時代

MDR-CD900STの音は、エンジニアたちが現場で聞いている音そのものです。
それはアマチュアが自宅で音楽作品を製作する場合にもいえて、つまり、MDR-CD900STで聞きながら仕上げた音楽作品は、業界標準の音になります。御利益として、どんなスピーカやイヤホンで再生してもそれなりに聞ける音になります。

以前の私の作品は、再生するスピーカやイヤホンの種類によって極端に(場合によっては耐えられないほど)音が歪んでいましたが。単純にMDR-CD900STを使うようにしただけで、その問題は大幅に改善されましたとさ。どれだけ私がMDR-CD900STに入れ込んでいるか、分かるってものでしょう。

MDR-CD900STは業務用ですから、長い間、市販されていませんでした。今はアマチュアでも自由に購入することができます。金さえ出せば誰でも業界標準を音を聞くことができるようになりました。私は良い時代に生まれたと思っています。

業界標準イヤホンの登場

やっと本題。
ヘッドホンMDR-CD900STは長く業界標準として在りましたが、ここに至ってイヤホンの必要性がクローズアップされてきました。野外での録音作業など、フットワークを要求される現場で、ライトに使えるモニタリング・イヤホンがあれば重宝するでしょう。

MDR-EX800STは、再びソニーミュージックが時代の要求に応えて発売した、業務用のモニタリング・イヤホンです。

現場のエンジニアから徹底的にダメ出しを食らいながら完成させたというイヤホンMDR-EX800STには、コンシューマ用なら「まあいいか」で済まされる個体差が許されません。最後の最後の工程では一つずつ、人が耳で聞きながら手で微調整しているそうです。

イヤホンMDR-EX800STはヘッドホンMDR-CD900STと同様に、現場の音を忠実に再現します。
今、私はこの原稿を書きながらタンジェリン・ドリーム★3 なんぞを聞いていますが。うん、私の耳では双方の区別が付きません。形状の異なる別種の製品なのに、まったく同じ音がするなんて……考えてみればすごい技術ですよ。

私は仕事で音楽作品を製作するので、耳の感覚をフラットにしておかなければなりません。MDR-EX800STは普段用のイヤホンとして安心して使えます。
» イヤホンMDR-EX800STのページ(ソニーミュージック)

★ エンジニアたちが現場で聞いている音
実際にはスタジオには必ず、精密に調整されたリスニングルームがあって、基本はそこのスピーカで再生した音を聞きながら作業しているそうです。しかしながら望ましいリスニング環境にいないときや、上の例のように遠方どうしで確認し合うときなどに、ヘッドホンMDR-CD900STは最後の拠り所になります。

また、最終判断はリスニングルームのスピーカの音で決定するにしろ、作業のときどきで、ヘッドホンMDR-CD900STでモニタリングするそうです。少なくとも、このヘッドホンで聞いて気づくような異常(高音のざらつきなど)は放置しておけない、とのこと。

★2 オーディオ業界のメートル原器
標準(スタンダード)の価値は、その妥当性ではなく、みんながそれを標準だと認めた、という事実そのものにあります。標準は標準だからこそ標準なのです。

私は子どもの頃、初めて手にした1メートル物差しをかざして(大きすぎるなあ……70cmくらいが1メートルだと便利だろうに、なぜこれが1メートルなんだろう)などと考えたことがあります。これがいかにも子どもっぽいナンセンスであることは、誰でもわかることでしょう。

Amazon.co.jpのレビューに「ほんとうは低音に乏しい」「作り物っぽい音」などのコメントも散見されますが。なんの意味もありませんし議論にもなりません。個人の所感なんてどうでもいい。ヘッドホンMDR-CD900STで聞く音が業界標準の音、フラットな音なのです。

★3 タンジェリン・ドリーム
私は自分の耳の感覚がおかしくならないように、イヤホンMDR-EX800STを使うようにしました。が、癖の強い音楽ばかり聞いていると、それはそれで偏ってしまいます。個人的には梶浦さんやダークウェイブなどの音楽が大好物なのですが。総じて高音域が強いので、長く聞いていると耳が高音寄りになります。

耳の感覚を元に戻すために、低音から高音までまんべんなく聞こえる――ある意味なんの特徴もない音楽をたびたび聞きます。その一つがタンジェリン・ドリームです。この選択が妥当かどうかは微妙ですが……私にとってはタンジェリン・ドリームの曲は、フラットに聞こえます。

ほんとうは毒にも薬にもならないイージーリスニングを聞くのがいちばんよいのでしょうが。さすがにそれは耐えられそうにありません。

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2013年01月06日

izotope RX その後

すだれさん
直前の書き込みに返答ありがとうございました。
コメントで返信差し上げようかと思ったんですが、
出来るだけ多くの方にここを見ていただけるようあえて新しい投稿をさせてください。

>ラーニングについて
なるほど、この機能を勘違いしていました。
あらかじめ環境音をソフトに覚えさせて、音源からその部分を抜き出す事で綺麗に原音だけを残す仕組みなのですね。

というわけで早速試してみました。
普段は録音時には電源を切っているやかましいデスクトップパソコンを付けっぱなしにして、
エアコンの風を最強にしたうえ、
コンデンサマイク(RODE NT2-A)の指向性を全指向性にしてノイズバリバリの状態で録音してみました。

てみる屋さんの楽器じゃなくて恐縮ですが、ソロギターをワンフレーズ、
最初の4秒をラーニング時間として取っています。
アップローダへ上げてるのでいつまでファイルが残るか分かりませんが、
たぶんここなら向こう数年は大丈夫だと思います。


処理前
http://www1.axfc.net/uploader/so/2745121
http://www1.axfc.net/uploader/so/2745121

処理後
http://www1.axfc.net/uploader/so/2745125
http://www1.axfc.net/uploader/so/2745125

SoundEngineで少しリバーブを後付
http://www1.axfc.net/uploader/so/2745126
http://www1.axfc.net/uploader/so/2745126


いかがでしょうか。
演奏のまずさはおいといて、また少し音がひずんでいるように聞こえるところも若干あるのですが、
購入2日目の素人が適当にいじくるだけでここまで出来る!ということを見ていただければと思います。

手順としては、最初の空白4秒でラーニングした後、
添付のような設定で"2回"処理をかけたのち、
高音部にチリチリしたノイズが消えなかったので開始4秒の9000hz以上あたりだけを選択して再度ラーニングし、
そこをかなり強めにデノイズをかけています。

こんな風に複数回処理するのが正道なのかどうかは分かりませんが、
試行錯誤してみた結果一回強くかけるより複数回に分けてかけたほうが良い結果をえられたような気がしましたので…。

ともかく、このような素晴らしいものを紹介いただきありがとうございました。
よりよい結果を得られるよう今後も研究を重ねていきたいと思います。

yoshivoo

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iZotopeRXでノイズ除去する際の補足

自宅でノイズのないクリアな音を録音する方法について過去に説明しました。
結局、ふつうの家庭ではどんなに努力してもノイズのない録音環境を用意することはできません。ですから、録音環境やレコーダはそこそこで妥協して、その代わり、強力なノイズリダクションソフトを使おう、という趣旨でした。私はここ数年iZotopeRXを使っていて、満足のいく効果を得ています。なので、探せば他にも良いノイズリダクションソフトがあるかもしれませんが、私はiZotopeRXを勧めています。

iZotopeRXには幾つかの機能があって、環境ノイズを除去するのはデノイザという機能です。おおまかな使い方はYouTubeのチュートリアル動画を観れば分かるでしょう。詳細は説明書に書いてあります。ここでは2点ほど補足しておきます。

できるだけ静かな環境で録音する

いくらノイズリダクションソフトで環境ノイズを除去するといっても、元の音がクリアであることに越したことはありません。できるだけ静かな環境で録音します。エアコン、パソコン、トイレの換気扇など、止めることのできるノイズ源はすべて止めます。外から音が入らないように窓やドアなども閉めます。マイクは指向性の強いものを使って、部屋の中のできるだけ静かな方向に構えて録音するようにします。

念のために一度、家中の部屋の静かさを調べた方がよいでしょう。場合によっては廊下、階段などが静かかもです。静かな季節や時間も把握しておいた方がいいです。うちの場合は、夏よりも冬の方が静かです。時間帯としては午前中が静かです。夜中も静かで録音にもってこいですが……これは演奏する楽器の音量や住宅事情によっては無理かもです。

環境ノイズを1分間ほど録音する

iZotopeRXデノイザのノイズ除去は、2ステップで行います。
最初に、デノイザに環境ノイズをラーニングさせます。録音した音源のうち、楽器の音が入っていない環境ノイズだけの箇所をマウスで範囲指定して、デノイザにラーニングさせます。デノイザは範囲指定された箇所を(なるほどこれが環境ノイズなのだな)と理解します。そして次に、楽器の音を避けながら環境ノイズのみを除去していきます。

デノイザが上手にノイズ除去できるか否かは、ラーニングの出来に大きくかかってきます。最悪な話、楽器の音までノイズとしてラーニングさせたら、楽器の音まで除去します。ラーニングさせる時間は長いほど効果が高い★ でしょう。YouTubeのチュートリアル動画を観ると、5秒くらいラーニングさせてそれでOKみたいな印象ですが、どうなんでしょう。私は念のため、1分くらいラーニングさせます。

私はレコーダを回しながら繰りかえし楽器を演奏して、最後に良い演奏が録音できたら、そのまま音を立てないように静かにして、続けて1分間ほど環境ノイズだけを録音します。そしてiZotopeRXのデノイザを呼び出したら、終わりの1分間を範囲指定してラーニングさせます。

★ 長くラーニングさせるほど効果も高い
例えば「ぶーーーーーん、ぶーーーーーん」とゆーーーーっくり周期的に変化する低音ノイズは、数十秒ほどラーニングしないと周期的に変化していることが分かりません。iZotopeのデノイザがどのくらいの長さの周期的なノイズまで理解できるように作られているのかは不明ですが、そこは信じて、私は1分間ラーニングさせています。

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2013年01月02日

音の定位 8

音楽を聴いているとき、楽器の音がどこで鳴っているように聞こえるか、というのを「音の定位」というそうです。パンを調整して音を左右に振りわけることはよく知られていますが、音の定位を決める要素はその「左右」を含めて「遠近」「幅」「焦点」の4つがあります。

ステレオイザ、ステレオエンハンサ

音の定位を決める要素のうち「幅」と「焦点」を調整するのはステレオイザやステレオエンハンサです。googleで探すときは "vst stereo" というワードで探してください。
» "stereo" 関連のVSTを紹介しているポータルページ

Stereo Touch

私が初期の頃から今も使っているステレオ化エフェクタです。別にこれがお勧め、とうわけでもありません。試しに使ってみたら使えたから使っているだけです。最近バージョンは低周波が雑音として混ざるので、私はずっと旧バージョンを使っています。他の同様のエフェクタを使った方がいいかもです。
» Stereo Touchの開発元サイト

MSED

音の「焦点」を調整するエフェクタです。注意事項としてモノラルな音には効果がありません。ソフトウェアシンセサイザのモノラルな音に対しては、一旦、上記のステレオイザでステレオ化しておいて、それからこのエフェクタを使ってください。これは私は使ったことはありませんが、見た感じごく標準的な機能であるようです。
» MSEDの開発元サイト

特に生楽器の音をステレオ録音した場合、音はピンポイントに聞こえるのではなく、ある程度の幅(面積?)があるように聞こえます。だからソフトウェアシンセサイザのモノラルな音も、ステレオイザで幅を持たせてやると、よりリアルに聞こえます。よくお手軽な方法として、コーラスをかけたりリバーブをかけたりしますが、厳密に言うとそれとは別の効果です。

手前で鳴っているピアノやギターなどリアル楽器の音は幅を狭くして、後ろで鳴っているシンセストリングなどの音は左右に大きく幅を広げるといい感じです。

「焦点」は聞き比べても違いが分かりにくいです。ステレオイザで音の「幅」をシビアに調整したら、それでほぼOKだったりします。試しに上記のMSEDを使ってみて「なるほどこれは!」と思えば使えばいいし、よく分からなければ使わなくてもそれほど困ることにはならないでしょう。

「焦点」を変更すると、音のリアリティが変化します。ソフトウェアシンセサイザの音と録音した楽器の音がどうにも混ざり合わないときに「焦点」を変えてやると、うまく馴染む場合があります。そんな話があるのだ、ということだけ覚えておけばいいと思います。

以上、音の定位について、私が知っていることを説明してきました。
私自身がDTMに関して、まだまだ勉強中です。今後また分かったことがあれば補足という形で記事を足していきますので。
ではでは。

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2012年12月05日

音の定位 7

音楽を聴いているとき、楽器の音がどこで鳴っているように聞こえるか、というのを「音の定位」というそうです。パンを調整して音を左右に振りわけることはよく知られていますが、音の定位を決める要素はその「左右」を含めて「遠近」「幅」「焦点」の4つがあります。

リバーブ

音の定位を決める要素のうち「遠近」を調整するのはリバーブです。リバーブはDTMをするのに必須のエフェクタです。何はなくともリバーブ、英語で綴ると "reverb" です。googleで探すときは "vst reverb" ワードで探してください。
» "reverb" を大量に紹介しているポータルページ

GLACEVERB

独特の透明感のあるリバーブです。ちょっと変わった仕様で、反射物の表面が波打っている状況での残響をシミュレートできます。狭い音楽室でラッパを思いっきり吹いたときに窓ガラスがびりびり鳴る様や、屋内プールの水面が波打つ様などを表現できる…そうです。

パラメータが独特なのでふつうのリバーブの感覚で扱えません。64種類もプリセットが用意されているので、それを選んで使うことになるでしょう。

安物音源のピアノをグランドピアノのように響かせたり、ストリングスのように加工したり、大太鼓を遠雷のように響かせたり。特殊効果として、私は今でも重宝して使っています。
» GLACEVERBの開発元サイト

リバーブはロケーションを決める

リバーブは音に人工的な残響を付加して、あたかもそれがどこか特定の場所で鳴っているように聞かせます。リバーブにはどれもたいてい「大聖堂」「小さな音楽ホール」「小部屋」などといったプリセットが用意されています 。それらを選んで音を聞いてみると「なるほどたしかに大聖堂の中にいるみたい」「なるほど自分の勉強部屋にいるような感じ」と実感できるでしょう。

リバーブは音が鳴っているロケーション――場所と距離を決めます。
場所は上で述べたようにプリセットを選んで決めます★1 。

距離というのは、音が自分からどのくらい離れた所で鳴っているか、ということです。
距離は残響の量で決まります。残響の少ない音は近くに聞こえて、残響を多くするほど遠くで鳴っているように聞こえます。ただし残響を多くするといっても限度があります。いくら残響を増やしても違いがよく分からない、本来の音が聞こえなくてぼわんぼわんするようならやりすぎです。だからリバーブってそんなに強くかけないです。

そうそう、
ロケーションをしっかり決定づけるために、すべての音に同一のリバーブをかけるといいです。「今度の音楽作品は体育館のライブ演奏を録音した感じ」と決めたら、体育館の残響のリバーブを用意して、ドラムもベースもギターもキーボードもぜんぶ同じリバーブをかけます。

ローパスフィルタ

ローパスフィルタで高音域を削ってやると、音は遠くで鳴っているように聞こえます。googleで探すときは "vst filter" のワードで探すといいでしょう。
» "Filter" を大量に紹介しているポータルページ

Prodyspace

本当はステレオイザの一種です。上手に使えばこれ一つで「左右」「遠近」「幅」を調整できます。何かのリバーブと組みあわせれば、それだけでほぼ完璧に音の定位を決めることができます。

そうですね、改めて考えて見るとなかなか優秀なエフェクタです。「ちょっくら次の作品では音の定位に気をつけてみようか」という人は、上記のGLACEVERBとこのProdyspaceのコンボを試してみてはいかがでしょうか。

私も初期のころは専らこのコンボを使っていました、が。仕様が私の直感に反していて、なんとも違和感があるのですよ。今では単なるローパスフィルタとして使ってます。だったらただのローパスフィルタを使えばいいようなものですが…なんとなく使いつづけています。別に困らないから続けてる習慣ってありますよね。
» Prodyspaceをダウンロードできるページ、開発元サイトは閉鎖したらしい?

ローパスフィルタで距離感を強調

日常でも、遠くの音はもわもわ曇ってよく聞こえないということを経験しているでしょう。遠くの音は高音域が消えてもわもわ曇っています。ですからローパスフィルタで高音域を削ってやると、遠くで鳴っているように聞こえます。やり過ぎるとそれこそもわもわになります。

主にリバーブで距離感を表現して、耳で聞きながら不自然に聞こえない程度にローパスフィルタで高音域を削るといいでしょう。

とまあ私はこのようにして音の遠近を表現しているのですが。
このやり方の問題として、慢性的にローパスフィルタを使うので全体的に音が曇りがちです。完成した音楽作品はローファイになります。だからマスタバスにイコライザを差して中音域を削り、音がクリアに聞こえるように努めています。

★1 プリセットを選んで使う
リバーブはものすごい数が出回っています。ですから、一つのリバーブについてパラメータの意味を熟知し、ああでもないこうでもないと設定をいじるよりも、たくさん集めてとっかえひっかえ使うのが効率よいです。素人がちょっと思いつくような設定はたいてい、既にプリセットとして用意されているものです。ものすごく気に入ったリバーブを使い倒すために独学するくらいでしょうか。

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2012年12月04日

音の定位 6

音楽を聴いているとき、楽器の音がどこで鳴っているように聞こえるか、というのを「音の定位」というそうです。パンを調整して音を左右に振りわけることはよく知られていますが、音の定位を決める要素はその「左右」を含めて「遠近」「幅」「焦点」の4つがあります。

左右はパンすればいい

音の定位を決める要素のうち「左右」については特別なエフェクタは要りません。どんなDAWでもそれぞれの音を左右に振りわけるパンを用意しています。パンのつまみを左に回せば左に音が寄りますし、右に回せば右に寄ります。

強いて言うならフェーズシフタ

強いて一つエフェクタを紹介するなら、フェーズシフタでしょうか。英語で綴ると "PhaseShifter" です。googleで探すときは "vst phase" で探してください。

mgPhaseShifter

私自身はmgPhaseShifterを使ったことはありません。コントロールパネルを見る限りふつうにフェーズシフタのようです。これで用は足りるでしょう。
» mgPhaseShifterの開発元ページ

フェーズシフタの実体は、1サンプル単位★1 で音を遅らせる超超ショートディレイです。
ちなみにエレキギターで使うシュワシュワ……というフェーザとは別物ですよ。

さてここで物理の話。
音は1m進むのに2.88ミリ秒かかります。私の頭の左側で鳴った音が、左耳に聞こえてから右耳に聞こえるまで0.54ミリ秒ほど遅れます。ということは逆に、両方の耳で聞こえている音の方側を0.0~0.5ミリ秒ほど遅らせると、音はその反対側に寄って聞こえます。パンは左右の音量バランスを変えて音を左右に振るのですが、フェーズシフタは音量バランスを変えずに音を左右に振ることができます。

フェーズシフタを使うと、音が自然な感じに左右に寄って聞こえます。音が頭蓋の外に出て聞こえる感じがします。パンほど強い効力がないので、私はパンとフェーズシフタを半々くらい使って音を左右に振るようにしています。

★1 1サンプル
DAWで音の波形をずっと拡大して見ていくと、最後にはギザギザの階段状になっているのを見ることができます。決してなめらかな曲線ではありません。このことががまさにデジタルである所以です。このギザギザの幅はDAWが表現できる最高精度で、これ以上に詳細に音の波形を表現することはできません。このギザギザの幅が1サンプルです。

フェーズシフタは、DAWが表現する最高精度で音を遅延させることができます。本来はM/S方式で録音した音声のM/Sの位相ずれを調整するという、神経質な用途で使います。

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音の定位 5

音楽を聴いているとき、楽器の音がどこで鳴っているように聞こえるか、というのを「音の定位」というそうです。パンを調整して音を左右に振りわけることはよく知られていますが、音の定位を決める要素はその「左右」を含めて「遠近」「幅」「焦点」の4つがあります。

フリーウェアでなんとかなりそう

これから数回にわたって、音の定位を調整するエフェクタを紹介します。誰でも手に入れることができるように、フリーウェアのエフェクタを選んで紹介します。

  • 「左右」を調整するエフェクタ……ミキサのパンとフェーズシフタ
  • 「遠近」を調整するエフェクタ……リバーブとローパスフィルタ
  • 「幅」と「焦点」を調整するエフェクタ……ステレオイザやステレオエンハンサ

私自身はSONARに付いてきたオマケを気に入っていて、そればかり使っています。ですから紹介するエフェクタは、私が実際に使って評価した物ではありません。説明文や画像から憶測して説明していることをご了承ください。

フリーウェアですから、どれだけダウンロードしても無料です。気になったエフェクタを片っ端からダウンロードして、自分で動かして調べてみてください。まったく同じ仕様のエフェクタでも、製作者によって微妙に(場合によってはかなり)使い勝手が違います。まさに自分の用途にぴったり、というエフェクタが見つかったときの喜びは格別です。

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2012年12月03日

音の定位 4

音楽を聴いているとき、楽器の音がどこで鳴っているように聞こえるか、というのを「音の定位」というそうです。パンを調整して音を左右に振りわけることはよく知られていますが、音の定位を決める要素はその「左右」を含めて「遠近」「幅」「焦点」の4つがあります。

「焦点」

音の定位を構成する要素のうち「焦点」はとても説明しにくいです。
とりあえず試聴サンプルを聞いてください。
» 音の定位 「焦点」

わかりますか。同じように左右いっぱいに広がって鳴っていても、音が両端に散ったり、中心に集中したりしています。ちょうど虫眼鏡で日光を集めて紙を焼こうとしたときに似ています。虫眼鏡を紙に近づけたり遠ざけたりすると、光が集まって点になったり、輪っかのように散ったりする様に似ています。

一般的に音の焦点を集中するほど、実体のあるリアルな音に聞こえます。逆に散らすと実体のない漠とした印象になります。ピアノやギターなどの音は焦点を集中してリアルに聞かせて、パッドなど雰囲気重視の音は焦点を散らしてぼんやり聞かせます。

音の「焦点」を調整するには「幅」のところで説明したChannelToolsというエフェクタを使います。これでなくても、高価なDAWには同じようなエフェクタが必ず付いているはずですよ。探してみてください。同じようなフリーのエフェクタも出回っていると思うのですが心当たりはありません。

「幅」と「焦点」でリアリティが決まる

ここで言うリアリティとは「本物の楽器みたいな音色だ」というような意味ではありません。「まるで手を伸ばせば触れそうだ」★1 というような意味です。石を投げたらコツンと演奏者に当たりそうな感触のことです。ピアノやギターなど現実に存在する楽器であれば、それこそ、どんなスタジオのどこに座って演奏して、どんなマイクをどのくらいの距離に配置している、みたいなリアリティが考えられます。MIDI音源のピアノやギターをそのくらいリアルに聞かせることができたら最高でしょう。

一方でシンセサイザーの電気音はそもそも実体のない音です。それでも例えばライブハウスでキーボードを演奏しているのであれば、どんなライブハウスでどんなスピーカで鳴らして、それをどこで聞いているか、みたいなリアリティは考えられます。ライブ録音のような雰囲気の音楽作品を製作するのであれば、そのへんを考慮するべきでしょう。

話を戻して、
音の定位をきちんと決めることによって、音にリアリティを持たせることができます。とりわけ「幅」と「焦点」は音のリアリティに強く影響します。これが言いたかった。

★1 手で触れそうなリアリティ
もちろんなんでもリアルだったらいい、というわけではありません。例えばパッドというのは音の隙間をこっそり埋めるいわば「意識されない音・聞こえない音」です。このような音は不用意に注意を引かないように、わざと焦点を散らしてリアリティを消してしまいます。

またMIDI音源のピアノやギターの音ができるだけリアルに聞こえるように工夫する一方で、マイクで録音した自分の笛の音が逆にあまりにリアルすぎて伴奏と相容れない。だから笛の音の焦点を散らしてわざとリアリティを消すという処理を、私はほぼ毎回やっています。

作風にもよるでしょう。パブのステージで演奏しているピアノ、コントラバス、フルートのジャズトリオなら、タバコの臭いまで感じられるようなリアリティがほしいところです。一方でイージーリスニングなポップは、あまりリアルでない方がさらっと聞き流せていい感じです。

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2012年12月02日

音の定位 3

音楽を聴いているとき、楽器の音がどこで鳴っているように聞こえるか、というのを「音の定位」というそうです。パンを調整して音を左右に振りわけることはよく知られていますが、音の定位を決める要素はその「左右」を含めて「遠近」「幅」「焦点」の4つがあります。

「幅」

音の定位を構成する要素のうち「幅」は説明しにくいです。
とりあえず試聴サンプルを聞いてください。
» 音の定位 「幅」

わかりますか。同じように正面で鳴っているにしても、真ん中の一点だけで鳴っているか、左右の幅を伴って聞こえるかの違いがあります。

「幅」を調整するには専用のエフェクタが必要です。
私はChannelToolsというエフェクタを使っています。これでなくても、高価なDAWには同じようなエフェクタが必ず付いているはずですよ。「あ、ひょっとしてあれのこと?」と心当たりがあるかもしれません。今一度、お手持ちのエフェクタを総ざらいして探してみてください。フリーのエフェクタも出回っていると思うのですが……心当たりはありません。

特徴的な使い方としては、ピアノ伴奏を左端から右端までいっぱいに広げて、まるでピアノの音に包まれたような印象にするとか。

あるいはどんな音でも、一点で鳴っているとどうにも作り物っぽい印象を受けます。取りあえずMIDIデータを打ちこんでシンセサイザー音源で鳴らしてみました的な、安っぽい感じになります。少しだけでも幅を持たせてやると、自然でリアルな雰囲気になります。ギターなど全面にしゃしゃり出る楽器は幅を狭くします。ストリングスなど奥でゆったりと雰囲気を醸す楽器は幅を広くします。

音の定位を決める最後の要素「焦点」については、後の記事で説明します。

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2012年12月01日

音の定位 2

音楽を聴いているとき、楽器の音がどこで鳴っているように聞こえるか、というのを「音の定位」というそうです。パンを調整して音を左右に振りわけることはよく知られていますが、音の定位を決める要素はその「左右」を含めて「遠近」「幅」「焦点」の4つがあります。

「遠近」

楽器の音が聞いている人の近く、あるいは遠くのどこで鳴っているか、ということです。
サンプル音源を聞いてください。
» 音の定位 「遠近」

人間は「左右」ほど敏感に「遠近」を聞きわけることができません。ですからこれで2つの音を分離することは難しいでしょう。(極端に差をつけると分かれて聞こえますけど。)それよりこの、正面前方にばあんと音の空間が広がる感じが重要です。イージーリスニングなど、音のランドスケープ(景観)を組みたてるような作風で駆使することになります。

音の「遠近」は残念ながら、「左右」のパンのようにつまみ一つで調整できたりません。いろいろ工夫して表現することになります。

遠い音というのは、曇っている音・残響の多い音のことです。曇っている音というのは、高音域が乏しい音のことです。これはローパスフィルタで高音域を削ってやればいいです。残響の多い音というのは、要するにリバーブのかかった音です。だから楽器の音が遠くで鳴っているように聞かせたいなら、ローパスフィルタで高音域を削り、強くリバーブをかければいいです。至近で鳴っているように聞かせたいならローパスフィルタとリバーブをOFFにします。中間距離ならその中間くらいです。

特徴的な使い方は例えば、手前でボーカルが歌っている遙か彼方からピアノの音がポー……ンと響いてくるような効果とか。ロックバンドでも、ギターを近くでシャカシャカ鳴らして、ドラムは少し奥で鳴っているように調整すると、なんだかライブハウスで聞いているような生々しい印象になります。

音の定位を決める残りの要素「幅」「焦点」については、後の記事で説明します。

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