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音の定位 4

音楽を聴いているとき、楽器の音がどこで鳴っているように聞こえるか、というのを「音の定位」というそうです。パンを調整して音を左右に振りわけることはよく知られていますが、音の定位を決める要素はその「左右」を含めて「遠近」「幅」「焦点」の4つがあります。

「焦点」

音の定位を構成する要素のうち「焦点」はとても説明しにくいです。
とりあえず試聴サンプルを聞いてください。
» 音の定位 「焦点」

わかりますか。同じように左右いっぱいに広がって鳴っていても、音が両端に散ったり、中心に集中したりしています。ちょうど虫眼鏡で日光を集めて紙を焼こうとしたときに似ています。虫眼鏡を紙に近づけたり遠ざけたりすると、光が集まって点になったり、輪っかのように散ったりする様に似ています。

一般的に音の焦点を集中するほど、実体のあるリアルな音に聞こえます。逆に散らすと実体のない漠とした印象になります。ピアノやギターなどの音は焦点を集中してリアルに聞かせて、パッドなど雰囲気重視の音は焦点を散らしてぼんやり聞かせます。

音の「焦点」を調整するには「幅」のところで説明したChannelToolsというエフェクタを使います。これでなくても、高価なDAWには同じようなエフェクタが必ず付いているはずですよ。探してみてください。同じようなフリーのエフェクタも出回っていると思うのですが心当たりはありません。

「幅」と「焦点」でリアリティが決まる

ここで言うリアリティとは「本物の楽器みたいな音色だ」というような意味ではありません。「まるで手を伸ばせば触れそうだ」★1 というような意味です。石を投げたらコツンと演奏者に当たりそうな感触のことです。ピアノやギターなど現実に存在する楽器であれば、それこそ、どんなスタジオのどこに座って演奏して、どんなマイクをどのくらいの距離に配置している、みたいなリアリティが考えられます。MIDI音源のピアノやギターをそのくらいリアルに聞かせることができたら最高でしょう。

一方でシンセサイザーの電気音はそもそも実体のない音です。それでも例えばライブハウスでキーボードを演奏しているのであれば、どんなライブハウスでどんなスピーカで鳴らして、それをどこで聞いているか、みたいなリアリティは考えられます。ライブ録音のような雰囲気の音楽作品を製作するのであれば、そのへんを考慮するべきでしょう。

話を戻して、
音の定位をきちんと決めることによって、音にリアリティを持たせることができます。とりわけ「幅」と「焦点」は音のリアリティに強く影響します。これが言いたかった。

★1 手で触れそうなリアリティ
もちろんなんでもリアルだったらいい、というわけではありません。例えばパッドというのは音の隙間をこっそり埋めるいわば「意識されない音・聞こえない音」です。このような音は不用意に注意を引かないように、わざと焦点を散らしてリアリティを消してしまいます。

またMIDI音源のピアノやギターの音ができるだけリアルに聞こえるように工夫する一方で、マイクで録音した自分の笛の音が逆にあまりにリアルすぎて伴奏と相容れない。だから笛の音の焦点を散らしてわざとリアリティを消すという処理を、私はほぼ毎回やっています。

作風にもよるでしょう。パブのステージで演奏しているピアノ、コントラバス、フルートのジャズトリオなら、タバコの臭いまで感じられるようなリアリティがほしいところです。一方でイージーリスニングなポップは、あまりリアルでない方がさらっと聞き流せていい感じです。

楽器があればもっと楽しい毎日
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