音の定位 7
音楽を聴いているとき、楽器の音がどこで鳴っているように聞こえるか、というのを「音の定位」というそうです。パンを調整して音を左右に振りわけることはよく知られていますが、音の定位を決める要素はその「左右」を含めて「遠近」「幅」「焦点」の4つがあります。
リバーブ
音の定位を決める要素のうち「遠近」を調整するのはリバーブです。リバーブはDTMをするのに必須のエフェクタです。何はなくともリバーブ、英語で綴ると "reverb" です。googleで探すときは "vst reverb" ワードで探してください。
» "reverb" を大量に紹介しているポータルページ
GLACEVERB
独特の透明感のあるリバーブです。ちょっと変わった仕様で、反射物の表面が波打っている状況での残響をシミュレートできます。狭い音楽室でラッパを思いっきり吹いたときに窓ガラスがびりびり鳴る様や、屋内プールの水面が波打つ様などを表現できる…そうです。
パラメータが独特なのでふつうのリバーブの感覚で扱えません。64種類もプリセットが用意されているので、それを選んで使うことになるでしょう。
安物音源のピアノをグランドピアノのように響かせたり、ストリングスのように加工したり、大太鼓を遠雷のように響かせたり。特殊効果として、私は今でも重宝して使っています。
» GLACEVERBの開発元サイト
リバーブはロケーションを決める
リバーブは音に人工的な残響を付加して、あたかもそれがどこか特定の場所で鳴っているように聞かせます。リバーブにはどれもたいてい「大聖堂」「小さな音楽ホール」「小部屋」などといったプリセットが用意されています 。それらを選んで音を聞いてみると「なるほどたしかに大聖堂の中にいるみたい」「なるほど自分の勉強部屋にいるような感じ」と実感できるでしょう。
リバーブは音が鳴っているロケーション――場所と距離を決めます。
場所は上で述べたようにプリセットを選んで決めます★1 。
距離というのは、音が自分からどのくらい離れた所で鳴っているか、ということです。
距離は残響の量で決まります。残響の少ない音は近くに聞こえて、残響を多くするほど遠くで鳴っているように聞こえます。ただし残響を多くするといっても限度があります。いくら残響を増やしても違いがよく分からない、本来の音が聞こえなくてぼわんぼわんするようならやりすぎです。だからリバーブってそんなに強くかけないです。
そうそう、
ロケーションをしっかり決定づけるために、すべての音に同一のリバーブをかけるといいです。「今度の音楽作品は体育館のライブ演奏を録音した感じ」と決めたら、体育館の残響のリバーブを用意して、ドラムもベースもギターもキーボードもぜんぶ同じリバーブをかけます。
ローパスフィルタ
ローパスフィルタで高音域を削ってやると、音は遠くで鳴っているように聞こえます。googleで探すときは "vst filter" のワードで探すといいでしょう。
» "Filter" を大量に紹介しているポータルページ
Prodyspace
本当はステレオイザの一種です。上手に使えばこれ一つで「左右」「遠近」「幅」を調整できます。何かのリバーブと組みあわせれば、それだけでほぼ完璧に音の定位を決めることができます。
そうですね、改めて考えて見るとなかなか優秀なエフェクタです。「ちょっくら次の作品では音の定位に気をつけてみようか」という人は、上記のGLACEVERBとこのProdyspaceのコンボを試してみてはいかがでしょうか。
私も初期のころは専らこのコンボを使っていました、が。仕様が私の直感に反していて、なんとも違和感があるのですよ。今では単なるローパスフィルタとして使ってます。だったらただのローパスフィルタを使えばいいようなものですが…なんとなく使いつづけています。別に困らないから続けてる習慣ってありますよね。
» Prodyspaceをダウンロードできるページ、開発元サイトは閉鎖したらしい?
ローパスフィルタで距離感を強調
日常でも、遠くの音はもわもわ曇ってよく聞こえないということを経験しているでしょう。遠くの音は高音域が消えてもわもわ曇っています。ですからローパスフィルタで高音域を削ってやると、遠くで鳴っているように聞こえます。やり過ぎるとそれこそもわもわになります。
主にリバーブで距離感を表現して、耳で聞きながら不自然に聞こえない程度にローパスフィルタで高音域を削るといいでしょう。
とまあ私はこのようにして音の遠近を表現しているのですが。
このやり方の問題として、慢性的にローパスフィルタを使うので全体的に音が曇りがちです。完成した音楽作品はローファイになります。だからマスタバスにイコライザを差して中音域を削り、音がクリアに聞こえるように努めています。
★1 プリセットを選んで使う
リバーブはものすごい数が出回っています。ですから、一つのリバーブについてパラメータの意味を熟知し、ああでもないこうでもないと設定をいじるよりも、たくさん集めてとっかえひっかえ使うのが効率よいです。素人がちょっと思いつくような設定はたいてい、既にプリセットとして用意されているものです。ものすごく気に入ったリバーブを使い倒すために独学するくらいでしょうか。
楽器があればもっと楽しい毎日
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