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2013年04月18日

ユニゾンの使い方 1

主メロディの音が聞こえにくいときは他の音でユニゾンして補強するといいですよ、という話です。

主メロディが聞こえにくい

YouTubeやニコニコの演奏動画を見たお客さんから「笛の音がよく聞こえない」「伴奏が大きすぎる」などとよく言われました。要は主メロディの音が伴奏に埋もれてよく聞き取れない、ということです。そして主メロディの音をしっかり聞かせることが、私の長い間の課題でもありました。

いやそんなの笛の音を大きくすればいいだけじゃん、と思うかもしれませんね。
もちろんそんなことはイの一番に試しましたよ。問題の曲をスペクトラムアナライザで観察すると、主メロディを演奏する笛の音は、既に伴奏よりもずいぶん大きな音なのです。もうこれ以上に音を大きくすることはできない、大きくすると耳が痛くなります。そのくらい大きな音なのに、伴奏に埋もれてしまって今一つはっきり聞こえないのです。

主メロディを演奏しているのが楽器であれヴォーカルであれ、どうにも伴奏に埋もれてしまう。もっとしっかり主メロディを聞かせたい、というケースがあると思います。そんなときは他の音でユニゾンして主メロディを補強するといいです。

新たに音を追加する

方法として単純に、新たに音を追加することが考えられます。
ストリングスによる主メロディの補強は定番でしょう。バイオリンの高い音やチェロの低い音を追加して主メロディを補強します。このとき2声、3声でハモってもいい感じです。ブラス系の音ならもっとずっと主メロディを力強く元気に聞かせることができるでしょう。チャイムや鉄琴のようにキラキラした音は曲全体が華やかになります。

一般的な話として、音の数が多いほど曲はゴージャスに聞こえます。ですから1コーラス目よりも2コーラス目……と曲が進むにつれて次々に音の数を増やして、盛り上げていくことをよくやります(ボレロみたいな展開ですね)。このときバイオリンなどが主メロディを補強する形で参加して、そのまま伴奏として居座る……みたいな演出をよくします。

伴奏している楽器を主メロディの補強にまわす

今まで伴奏していた楽器を一時的に主メロディの補強にまわす、という手もあります。一番の候補はバイオリンやチェロなどのストリングス系でしょう。ピアノやギターなど、伴奏の中核として外せない楽器を敢えて主メロディの補強にまわすのも、上手くキマると大効果です。

お互いにつぶし合わないようにする

ユニゾンして主メロディを演奏している音は、みんな同じ音だと重なってしまって聞き分けられません。1オクターブ高くしたり低くしたり、思い切って2オクターブ高い音にしたりして、お互いにつぶし合わないようにします。

あるいはパンで左右に振り分けるとか、遠近に大きくずらすとか、ディレイで発音のタイミングをずらすとか、そんなやり方で音が重ならないようにする方法もあります。

まずはふつうに作って聞いてみる

音楽作品を製作するとき「この部分はユニゾンで補強しよう!」とはっきり見えている場合は別として、まずはふつうに伴奏を作って主メロディを重ねて、何度も聞いてみる。そこで(主メロディがよく聞こえないな……)と思ったら、初めて主メロディを補強することを考えたらいいと思います。んで実際にやってみて、ヘンだったら別のパターンを考えればいいです。このような作業は試行錯誤です。単純に時間をかけた分だけよい作品に仕上がります。

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2013年04月16日

ハーモニーの音量をコンプレッサで調整する

メロディとハーモニーが歌っているとき、ハーモニーの音量をサイドチェイン搭載のコンプレッサで調整するといい感じですよ、というお話です。

メロディが出るとハーモニーが引っ込む

メロディとハーモニーが一緒に歌っているとき、メロディをはっきり聞かせるために、ハーモニーの音量をすこし小さくするとバランスがよくなります。しかし曲の演出として、メロディが止まってハーモニーだけがソロで歌うような場合は、ハーモニーをはっきり聞かせるために、一時的にハーモニーの音量を大きくするとよいです。そして再びメロディが歌いはじめたら、バランスを取るためにハーモニーの音量を小さくします。

サイドチェイン搭載のコンプレッサが使える

この一連の動作はフェーダのオートメーション★1 で表現するのが通常だろうと思いますが。サイドチェイン搭載のコンプレッサを上手く使うと、効果的に表現できることがあります。

サイドチェイン搭載のコンプレッサというのは、普通にコンプレッサなんですけど、サイドチェインという機能を持っています。

まずコンプレッサというのは、音が大きくなりすぎるのを防ぐ★2 エフェクタです。入力された音をずっと監視して、音が一定以上の大きさになるとすっとボリュームを絞ります。そして音が小さくなると再びボリュームを元に戻します。

サイドチェインというのは、メインの音の他に横から別の音を入力することができて★3 、ボリュームの操作はこの横から入力した音に従って行います。横から入力した音が大きくなると、メインの音量が大きかろうが小さかろうが関係なくボリュームを絞ります。横から入力した音はボリュームの操作に使うだけで、聞こえるわけではありません。聞こえるのはメインの音だけです。

今回の場合は、ハーモニーの音をメインに入力して、メロディの音を横から入力します。横から入力する音量やスレッショルドなどのパラメータを適切に調整すると、メロディが歌うとハーモニーの音量がすっと小さくなって、メロディが止まるとハーモニーの音量がすっと大きくなります。まるでメロディとハーモニーが出たり引っ込んだり、掛け合いをしているように聞こえます。

私はSONARに付属していたコンプレッサを使っていますが。
フリーのVSTでもサイドチェイン搭載のコンプレッサはたくさん見つかると思います。ぜひ探してみてください。 » SONARのメーカーサイト

★1 フェーダのオートメーション
DAWのトラックに折れ線グラフを描いてフェーダを自動的に動かす機能です。よくやるのはボーカルの最初の出だしを一瞬だけ音量を上げるとか。こうすると歌い出しがはっきり聞こえます。あるいは伴奏楽器の増減に合わせてボーカルの音量を細かく変化させたりとか。

オートメーション機能はフェーダだけでなく、パンポットとか、エフェクタやシンセサイザのパラメータも自動で動かすこともできます。ボーカルが高らかに歌い上げる瞬間だけリバーブの音量を大きくするなど、細かな演出ができます。オートメーション機能は、今日日の製品版のDAWならどんな安物でも搭載していると思います。

★2 音が大きくなりすぎるのを防ぐ
コンプレッサの本来の用途は、ラジオスタジオで、不意の大音量で機械が壊れてしまうのを防ぐためでしたが。パラメータを極端に設定するとピアノやギターの音がオルガンみたいになったり、逆にアタックを鋭く強調したりなど、同じエフェクタとは思えないほどさまざまな効果を発揮します。コンプレッサの使い方だけで一冊の本になります。「すぐ使える!楽器別のコンプレッサの使い方」みたいな本もあります。一度読んでおくとよいです。

★3 横から別の音を入力する
「横から別の音を入力する」というのは、SONARの場合は「センドを挿入」機能で実現しています。試しにトラックのFX欄にサイドチェイン搭載のコンプレッサを登録した状態で、いつものように「センドを挿入」のプルダウンメニューを見ると、そのコンプレッサの名前が見つかるはずです。それを選択すればいいです。コンプレッサに限らず2つ以上の音の入力を持つエフェクタは、2つめ以降の音はたいていこの「センドを挿入」で入力できます。SONAR以外のDAWについては、どうしているのか私は知りません。できるはずですけど。

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2013年04月12日

マキシマイザは賢いやつを使おう

一言で言うと、マキシマイザには賢いやつとお馬鹿なやつがある、ってことです。
「なんとそうだったのか!ではさっそく」という、よく分かっている人は、以下の記事を読む必要はないですよ。あなたの理想のマキシマイザを探しまくってください。ほんとうに賢いやつとお馬鹿なやつでは、ぜんぜん性能が違いますから。
んでは続けます。

音は大きい方がよい

自主レーベルのCDにしろ、ダウンロード販売のmp3ファイルにしろ、YouTubeやニコニコに投函する演奏動画にしろ、音楽作品の音は大きい方がよいです。聞こえにくい小さな音をボリュームを上げて聞くとサーとノイズ混じりになりますし、単純に音が大きい方が迫力がありますしね。

だから音楽作品を製作する最終工程では、音量が最大――0.0dBになるまで音楽ソフトのフェーダをめいっぱい上げて★ ファイルに書きだすわけです。しかしそうやって製作した愛しい作品よりも、CDで聞くプロの音はもっとずっと大きいです。念を押しますが、音量は0.0dBよりも大きくできません。0.0dBを超えると音はばりばり割れてしまいます。音量はどちらも最大の0.0dBなのに、プロの音はもっとずっと大きく聞こえるというのは、不思議なことです。

プロの音は厳密には音量ではなく、音圧が大きいのです。
音圧が大きいと音量が同じでも、ずっとずっと大きな音に聞こえます。
マキシマイザはこの、音圧を大きくするエフェクタです。

マキシマイザには賢いやつとお馬鹿なやつがある

下の図は、マキシマイザを使っていない音の波形と、マキシマイザを使った音の波形を見比べたものです。どちらも音量は最大の0.0dBです。これ以上、ちょっとでもフェーダを上げると音が割れます。

wave130412.gif

マキシマイザを使った音は「これでほんとうに割れないのか」と心配になるほど、一見して不自然な波形です。実際、不自然さを感じさせないように人間の耳の習性・錯覚も利用しつつ、そしてもちろん割れないように、ここまで音を歪めるのは簡単ではありません。だからマキシマイザによって、すごく賢いやつと、どうにもお馬鹿なやつがあります。

例えばSONARに付録するCakewalk Boost11は、3dBも限界を超えるとばりばり音が割れるという、気休め程度の性能です。対してvoxengoのELEPHANTは、波形が海苔のようになってもびくともしません。 » voxengoのELEPHANT

あいにく私はこの二つしか使ったことがありません、あるいはもっと強力なマキシマイザがあるかもしれません。いろんな人の評価を参考にしてネットを探してみてください。

下ごしらえとしてコンプレッサを使う

マキシマイザで音圧を上げると、波形の凸凹をハンマーで叩きつぶしたようになります。だからマキシマイザを使う前に、ある程度コンプレッサで音を圧縮しておくとよいです。

コンプレッサのパラメータ調整はほんとうに悩ましいですが、たいていのコンプレッサにはマスタリング用のプリセットが用意されています。それをそのまま使うのが無難です。自分で調整するパラメータはスレッショルドだけ。これを上下して音を圧縮します。

私はアコースティック楽器のソロ演奏などナチュラルな作品では4.0~5.0dBほど、ポップスやロックなど賑やかな作品では7.0~8.0dBほど圧縮します。これが常識的な措置かどうかは知りません。自分の経験からこれで上手くいくっぽいので、そうしています。

★ フェーダをめいっぱい上げる
音量を最大に上げるというのは、ポップスやロックなど、楽器の数が多い賑やかな音楽作品の話です。しんみりしたハープのソロ演奏などは、現実でもそんなに大きな音はしないはずですから、もう少し音量を小さめに仕上げるとバランスよいです。どのような作品にどのくらいの音量が適切なのか。自分の作品とよく似たプロの作品を調べて、その音量をそのまま真似すればいいです。

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2013年04月06日

短い曲を水増しする 3

音楽作品には体裁というものがあります。一つの音楽作品として最低でも2分程度の長さがほしいところです。短い曲は2分程度の長さになるように、あの手この手で水増しします。

一つの楽器についての工夫(音色について)

たった一つの音に聞き惚れる、ということは確かにあります。
ただ鳴っているだけで聞いていて飽きない音、というのはもうそれだけで無敵です。聞いている人を飽きさせない、という観点からすると、楽器の音色は「美しい音」よりも「複雑な音」の方がよいかと思います。数回聞いた程度では簡単に「ああこんな音ね」と分かってしまわない音の方が、長くお客さんの興味を引きつけるでしょう。

ランダムに音色を変化させる

例えば弾くたびに微妙にランダムに音を変化させる、ということが考えられます。生の楽器は人間が演奏すると自然に音にばらつきができるので、そのままでよいでしょう。シンセサイザの場合は、音符のベロシティ(強弱)に応じてフィルタを開け閉めするなどの工夫をします。フランジャーなどのエフェクタでゆっくりと周期的に音色を変化させるのも、いささか古くさい表現ではありますが、かっこよく決まるときは決まります。

音符のベロシティをランダムにばらつかせる、というソフトウェアやエフェクタがあります。こういうのを積極的に使っていくといいです。Band-in-a-Boxにはフィオリトゥーラという、音符データを人間が演奏したように加工する機能があります。ある程度はフレーズ連なり具合を見ているようで、ランダムよりはましな、かなり人間が弾いているようなニュアンスに加工してくれます。
» Band-in-a-Boxのメーカーサイト

音符の長さやフレーズに応じて音色を変化させる

より凝った例では音符の長さやフレーズに応じて音色を変化させる、ということが考えられます。通常の演奏用にアタックの穏やかな音色。素早く演奏する用のレガートな音。スタッカート用の鋭く短い音。いろいろニュアンスの異なる音色を用意して、それぞれ異なるチャンネルを割り当てておきます★ 。

一方で各音符について、音符の長さやベロシティ、フレーズの連なり具合を考慮しながら(この音符はチャンネル1、この音符はチャンネル2……)と適切に指定します。

一曲全部の音符について、チャンネル番号を一つ一つ適切に設定するのは、手でやるとたいへんな重労働ですが。SONARにはCALというMIDIデータを加工できるプログラミング言語が用意されています。またJavascriptのプログラムを読み込んでMIDIデータを加工するJFilterというmfxエフェクタもあります。こういうのを使えば、最初にプログラムを書くのはたいへんですが、ボタン一発で作業が完了します。
» SONARのメーカーサイト
» JFilterのサポートサイト

いちばん目立つ音はリアル音源で

何万円もする巨大なサンプリングデータを抱えたリアル音源は、実際に人が楽器を弾いた音を鳴らしますから、そりゃリアルです。同じ音をわざわざ複数回サンプリングして弾くたびに違う音を鳴らす、という凝った音源もあります。

自分の音楽作品で、いちばんよく使ういちばん目立つ音は、ここは奮発してリアル音源を購入しても損はないと思います。私の場合は、お金に余裕ができて最初に購入したのは、ベースの音源でした。これだけで音楽作品にずいぶん迫力が出ました。
» Chris Hein Bassのメーカーサイト

★いろんな音色に異なるチャンネルを割り当てる
これは既に常套手段になっていて、最初からそのような使い方を想定したシンセサイザもたくさんあります。例えばD-Proのバイオリン音源にはサスティン、レガート、トレモロ、ピチカート、などニュアンスの異なる音色がいくつも用意されています。これらはサスティンの音色だけ使う、ピチカートの音色だけ使う、でもいいですけど。一曲で使いそうな音色をぜんぶライブラリから呼び出して(この音色はチャンネル1、この音色はチャンネル2……)とそれぞれに違うチャンネルを割り当てておきます。

そして一方で各音符について(この音符はチャンネル1、この音符はチャンネル2……)と適切に指定して、変幻自在な演奏表現をします。

これは高価な製品版だけではありません。
DSKのOvertureなどフリーの音源もあります。複数個のシンセサイザを一つにまとめた形の音源で、それぞれのシンセサイザに別のチャンネルを割り振ることの出来るタイプがそうです。
» DSK(フリーウェア音源のサポートサイト)

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2013年03月28日

短い曲を水増しする 2

音楽作品には体裁というものがあります。一つの音楽作品として最低でも2分程度の長さがほしいところです。短い曲は2分程度の長さになるように、あの手この手で水増しします。

他の曲が参考になる

なんだかんだ言って他の曲が参考になります。
アマチュアの頭ではいくら考えたっていいアイデアは出てきません。他人の作品の良いところを真似するのが精一杯です。なので普段からたくさんの曲を聞いておくことがどうしても重要★1 になります。

って今更そんなことを言われても困るでしょう。即効性のある方法としては、参考になりそうなYouTubeの演奏動画を手当たり次第に再生リストにまとめて、仕事をしながら聞き流します。同じ聞き流すにしても(まだ短い、あと20秒どうしよう?)のように課題を抱えていると、成果が違ってきます。無意識がけっこういろいろ拾ってくれます。不意に(3コーラス目の後にイントロ+サビパートを追加しよう)みたいな解決法を思い浮かんだりします。

短いに越したことはない

「音楽作品として最低でも2分程度の長さがほしい」と言ったそばからなんですが。
短い曲はやっぱり短いままの方が無難です。絶対に2分以上の長さが必要なのか、音楽作品としてきちんと体裁が整っていないとダメなのか。今一度だけ考え直してみてください。

例えばYouTubeやニコニコに投函する演奏動画には、別に「2分以上の長さがなければならない」などという規定はありません。むしろ、無理して3分30秒の作品に仕上げたものの、聞いたお客さんが途中で飽きてチャンネルを変えてしまった、という方が大ダメージです。★2 いっそ1分くらいの中途半端な作品で「え、もう終わり?」と思われた方がまだましです。

気をつけることとして、4番まで歌詞があるような長い曲の場合です。
そういう曲って人間の歌が入るから聞いていられるのであって、これを楽器演奏オンリーにするとさすがに飽きます。原曲が4コーラスあるから、というだけの理由で馬鹿正直に4コーラスの構成にするのでなく、お客さんが飽きないうちに2コーラスで早々に切り上げる、といった判断が必要です。少なくともYouTubeやニコニコのお客さんって、作品の短かさに関しては寛容だという印象です。1分30秒の尻切れトンボな作品でも「いいネ!」を入れたりします。

★1 たくさん聞くことが重要
「だから普段からたくさん音楽を聞きましょう」というのも、ほんとうはずいぶん不自然なアドバイスなのです。

音楽作品を製作するための必要不可欠な資質として、
音楽を聞くのが大・大・大好きでなければなりません。世の中の作曲家や演奏家はたくさんの音楽を聞きますが、それは仕事だから仕方なく聞いているのではありません。むしろ周りの人が「こんなときくらい耳からイヤホン外しなさいよ!」と怒るほどだらしなく聞きます。まるで中毒患者、音楽を聞くのを止められない、というのが真相です。音楽を聞くことは彼らにとって呼吸するようなもので、だから「たくさん音楽を聞きましょう」などというアドバイスは「好きなだけ息をしてもいいですよ」というのと同じくらいナンセンスです。

逆に「たくさん音楽を聞きましょう」とアドバイスされて「じゃあ私も今日から本腰入れて音楽を聞くか」などと決心する人は、なんというか、向いていないです。ダメだとは断言できませんが……向いていないなあ、と私は思います。

この辺の事情は音楽に限らず、他の全ての創作活動において同様です。
漫画家や小説家は例外なく、他人の作品を読むのも大好きです。作者同士がお互いにお互いの作品のファンです、という話もよく聞きます。

★2 チャンネルを変えられると大ダメージ
YouTubeのランキング決定アルゴリズムが刷新されたとたん、超人気だったK-POPが見る影もなく失墜した、という事件がありました。途中でチャンネルを変えた――最後まで見なかったビューはカウントしないというアルゴリズムに変えたという噂で、それでK-POPがランキング外に落ちてしまったということはつまり、K-POPの人気を支えるものすごい数のビューは、みんなクリックはするものの実はほとんど最後まで見ていなかったのだ……という憶測が成り立ちます。

K-POPの話はともかく、最後まで見たビューと途中でチャンネルを変えたビューを区別して統計することは合理的です。途中でチャンネルを変えたらカウントしない、というのはいささか厳しすぎる気もしますが。なんらかのマイナス判定をしたとしても不思議ではありません。だからだらだらと3分も続けて飽きられるよりは、1分くらいでぱっと切り上げる方が、むしろ作品として高評価だろうと憶測します。YouTubeからもお客さんからも。

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短い曲を水増しする 1

音楽作品には体裁というものがあります。
身内だけのささやかな音楽会で演奏を披露するにしろ、YouTubeやニコニコに動画を投稿するにしろ、一つの音楽作品としてある程度の長さがほしいところです。CDに収められている曲はだいたい3分ちょっとで、2分30秒なら小作品。2分より短かいときちんとした作品というより、実験作品・試作品といった印象です。

あの手この手で水増し

元々3分くらいの長さの曲ならそのままカヴァーすればいいです。
しかしながら中世古楽や民族音楽では「夕焼け小焼けの赤とんぼ」のように、長さが10小節ほどしかない短い曲もあります。これをこのまま演奏するわけにもいきません、お客さんが「さてそれでは」と曲を聴く心構えをする前にあっという間に終わってしまいます。

音楽作品としての体裁を整えるために、最低でも2分くらいの長さになるように、あの手この手で水増しします。短いフレーズを何度も繰り返して、でも単純に繰り返すだけだと飽きられますから(3コーラス目は伴奏だけにするか?)などといろいろ工夫します。

基本は試行錯誤

この連載では、短い曲を水増しして長くする方法について説明します。
っても私のやり方は基本的には試行錯誤です。半ば行き当たりばったり、上手くいけば採用するし、ピンとこなければ他の手を試すだけです。

こうして記事を書き起こしてみると…わざわざ言うほどのこともない。常識的なことしかやってない気がしてきましたが。
「そうそうこの手もあった」と参考になれば幸いです。

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2013年03月25日

考えるな、思い出せ!

音楽作品を製作していて、どうしてよいか分からず困ったときの対処です。
例えば「いいイントロが思いつかないどうしよう…」というような場合です。
こんなときいくら考えてもダメです、答えは出てきません。こんなときは考えるのではなく、思い出すのが正しいです。

どうすればいいか”考える”のではなく、どうすればよかったか”思い出す”

具体的には、過去に聞いたいろんな作品で、イントロはどんなだったかを一生懸命に思い出します。今製作している音楽作品によく似た作品はどんなのがありましたか。そのイントロはどんなでしたか。あるいは最近聞いた曲のイントロはどうだったでしょうか。こうやって思い出していると、案外そのうち「ああ、あれが使えそうだ」というイントロが見つかります。★1

参考資料をたくさん集める

しかしいきなり思い出せと言われても、またこれがなかなか思い出せるものでもありません。
なので予め参考になりそうな資料をたくさん集めておきます。YouTubeで参考になりそうな動画作品をたくさん集めて、再生リストに登録しておきます。

例えば私は最近、中世古楽っぽい作品を主に作っていますから、することがない暇な時間にぶらぶらとYouTubeを眺めて、気に入った中世古楽の動画を再生リストにまとめています。★2 そして客さんのメールに返事を書いたり仕事しながら、ずっと聞き流しています。そうすると「ハープってこんな使い方もするのか…」などといろいろ勉強になります。「っとこのイントロいただき!」という、まさにピンポイントな発見をしたりもします。

もしまだ再生リストを用意していないなら、今からでも用意するといいです。
それこそ、動画を集めているうちに良いイントロがひらめくかもですよ。

★1 思い出していると答えが見つかる
右脳の得意なパターンマッチングによる問題解決法です。パターンマッチングは素早く確実に答えを得ることができます。ただし欠点もあって、得た答えはどれもありふれた――どこかで見聞きした答えばかりです。そりゃそうでしょう。

他人から正気を疑われるようなユニークな答えは、左脳による論理的な熟考によってのみ手にすることができます。

★2 気に入った動画を再生リストにまとめる
ここで「この動画はどうしょうかな…」などと厳選しなくてもよいですよ。「お!」と思ったらとりあえず登録すればいいです。あとで再生リストを繰り返し聞いているうち「何回聞いてもこの曲は嫌い」というのが出てきます。そしたらそれを再生リストから削除すればよいだけの話です。

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2013年03月23日

絶対にお客さんは気がついてます

音楽作品を製作していて(あ、ここ不味いな…)と思うことがよくあります。
それは楽器の演奏の細かい所だったり、曲の構成といった大きな所だったりしますが。そいういう所って、絶対にお客さんは気がつきます。作品を聞いて口では何も批評しなくても、絶対に気がついてます。私が気がつく程度のことは誰だって気がつく、ってことです。

だから音楽作品を製作するときの前提というか心構えとして、
私が自分で気づいた不味いところは、極力修正するようにしています。「今はこれが精一杯」というレベルまで修正した作品は、それで他人から酷評されてもそれほどダメージはありません。だってもう、指摘されたところでどうしょうもないレベルですから。(ってもYouTubeやニコニコ動画では、滅多に他人から酷評されるようなことはありませんが。)逆に不味い所を残したまま作品として完成させて、他人からそこを指摘されると、自分の怠け心を見透かされたようでものすごく恥ずかしいです。だから私は恥ずかしい思いをしたくないという、かなりネガティブな動機で音楽作品の製作に取り組んでいます。

あるいは不味いのは分かっているが、今の私ではどうしょうもない、
という場合もあります。どうにも演奏技術が足りないとか、エフェクタの調整方法が分からないとか、あと一回リテイクする気力がまったく残っていないとか。残念な結末ですが、それも完成したと見なします。アマチュアには〆切がありませんから、どこかで作品を完成させないと、いつまでたっても完成しません。アマチュアの目標の第一は、とにもかくにも作品を完成させる、というところにあります。

残した後悔は、次の作品を製作する上での課題とします。
演奏の特訓をしたり、エフェクタの使い方を勉強したりして、次の作品の製作に臨みます。

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2013年01月25日

プログラミングできるMIDIプラグイン-JFilter

JFilterはMFX規格のプラグインです。

CakewalkやSONARなどで使うことができるソフトウェアのMIDIエフェクタです。MIDIのエフェクタですから、つまりMIDIデータ――平たく言うと音符データを加工するものですが……

JFilter自体は、なにか固有の機能を持っているエフェクタではありません。JFilterはユーザが用意したプログラムに従ってMIDIデータを加工します。プログラミング言語はJavascript★1 です。

ええっと結局、なにができるのでしょう。
なんでもできますよ、それこそプログラム次第です。全体的に音符の長さを延ばしてレガート風味にするといった単純なことから、和音からアルペジオを作ったり、メロディに細かなアーティキュレーションを追加したり。理屈の上では自動作曲だってできるはずなのです……どれだけプログラムを書かなければならないか、ちょっと想像できませんが。

ベースとギターの演奏を掛け算

今ちょうど製作している音楽作品の中で、トルコのウードという弦楽器を伴奏に使いたいと思いました。私は打ち込みが苦手ですから、ここで新しくMIDIデータを打ち込むなんて勘弁してほしいところです。できるだけ既存のMIDIデータで間に合わせたいところです。難しいことは期待しません。例えばベースのメロディーに沿って、じゃんじゃかとギターのようにかき鳴らしてくれるだけでいいです。なのでベースとギターの演奏を掛け合わせて、ウード用のMIDIデータを生成することにしました。

結果だけ報告しますね。
下の試聴サンプルの1が、基になったベースとギターのMIDIデータです。どんな演奏か、TTS-1というソフトウェアシンセサイザで鳴らしてみました。そしてもう一つの2が、掛け合わせた結果のMIDIデータです。EMM-Knagalisというソフトウェアシンセサイザで鳴らしてみました。なるほど、それっぽい感じです。
» 1.基になったベースとギターの演奏
» 2.かけ算した結果のウードの演奏

一度プログラミングしてしまえば後はらくちん

初めて使うにしては、十分な結果だと判断しています。
いざプログラムが完成してみると、実はこれは「2つの楽器の演奏を掛け算する」という、極めて汎用的な機能に仕上がっていました。今回はベースのメロディーをじゃんじゃか演奏しましたが、例えばボーカルに合わせてじゃんじゃか演奏させることだってできますよ。プログラミングするのに2時間ほどかかりましたが、この機能は今後の音楽作品を製作するときにも使うでしょうから、十分に取り返せます。

先に説明したように、JFilterが何をするかはプログラム次第です。
ギターのメロディーに細かなアーティキュレーションを追加するとか。ベースのメロディーをチェロ用に調整するとか。させたいことはたくさんあります。確かにプログラムを書くのに時間がかかります。しかし一度書いてしまえば、その後の音楽作品を製作する際に、作業時間を大幅に短縮することができます。まったくブラボーなMIDIプラグインなのです。

★1 Javascript
Javascriptは、ホームページを自作するときに使うプログラミング言語として知られています。一時期ものすごく流行って、マウスカーソルを追いかけるようにキラキラ星を飛ばしたり、文字列を電光掲示板のようにスクロールさせたりなど、無意味にケバいホームページが乱立する原因になりました。

そんな経緯から、私はJavascriptを子供だましなプログラム言語だと認識していましたが。今回改めて勉強してみると、実は美しいプログラミング言語なのでした。一つ賢くなりました。

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2013年01月23日

ソニーのイヤホンMDR-EX800ST

遅まきながら、ソニーミュージックからモニタリング・イヤホンが発売されていることを知り、速攻で入手しました。私はこれを普段用に使うつもりです。以前、他メーカーのイヤパッドでずっと音楽を聴いていて、耳の感覚をおかしくしたという経験があります。私は仕事上、耳の感覚がフラットでなければなりません。「普段に使える、業務用のヘッドホンと同等なイヤホンがあったらなあ」と常々望んでいたのでした。

業界標準というヘッドホン

MDR-CD900STはソニーミュージックが販売している業務用のモニタリング・ヘッドホンです。

もちろんソニーミュージックのスタジオでエンジニアたちがマジモンで仕事で使っている品です。MDR-CD900STで聞くCDの音はつまり、エンジニアたちが現場で聞いている音そのもの★1 です。

CDを製作したエンジニアたちはみんな、この音を聞いて、最終マスタリングにGOを出した、ということなのです。

MDR-CD900STはソニーミュージックのスタジオ以外の現場でも評価され、ついに業界標準と言われるようになりました。MDR-CD900STは発売された20年前から現在に至るまで何一つ変更が加わることなく、オーディオ業界のメートル原器★2 として在りつづけています。

みんな同じなのが重要

リスナーは自分が最高と信じている音で好きに音楽を聴けばいいですよ。
しかし、現場のエンジニアたちはそういうわけにはいきません。みんなで同じ音を聞いていなければ仕事になりません。例えば「CDの最初のマスタです。チェックをお願いします。」といって、試し焼きしたCDを出張先の責任者に送付したとします。このとき責任者が1,980円の玩具のようなイヤホンで聞いたとしたらどうでしょうか……彼がどんな評価を下すにしろ、参考にならないことは明らかです。

誰でも業界標準の音を聞くことができる時代

MDR-CD900STの音は、エンジニアたちが現場で聞いている音そのものです。
それはアマチュアが自宅で音楽作品を製作する場合にもいえて、つまり、MDR-CD900STで聞きながら仕上げた音楽作品は、業界標準の音になります。御利益として、どんなスピーカやイヤホンで再生してもそれなりに聞ける音になります。

以前の私の作品は、再生するスピーカやイヤホンの種類によって極端に(場合によっては耐えられないほど)音が歪んでいましたが。単純にMDR-CD900STを使うようにしただけで、その問題は大幅に改善されましたとさ。どれだけ私がMDR-CD900STに入れ込んでいるか、分かるってものでしょう。

MDR-CD900STは業務用ですから、長い間、市販されていませんでした。今はアマチュアでも自由に購入することができます。金さえ出せば誰でも業界標準を音を聞くことができるようになりました。私は良い時代に生まれたと思っています。

業界標準イヤホンの登場

やっと本題。
ヘッドホンMDR-CD900STは長く業界標準として在りましたが、ここに至ってイヤホンの必要性がクローズアップされてきました。野外での録音作業など、フットワークを要求される現場で、ライトに使えるモニタリング・イヤホンがあれば重宝するでしょう。

MDR-EX800STは、再びソニーミュージックが時代の要求に応えて発売した、業務用のモニタリング・イヤホンです。

現場のエンジニアから徹底的にダメ出しを食らいながら完成させたというイヤホンMDR-EX800STには、コンシューマ用なら「まあいいか」で済まされる個体差が許されません。最後の最後の工程では一つずつ、人が耳で聞きながら手で微調整しているそうです。

イヤホンMDR-EX800STはヘッドホンMDR-CD900STと同様に、現場の音を忠実に再現します。
今、私はこの原稿を書きながらタンジェリン・ドリーム★3 なんぞを聞いていますが。うん、私の耳では双方の区別が付きません。形状の異なる別種の製品なのに、まったく同じ音がするなんて……考えてみればすごい技術ですよ。

私は仕事で音楽作品を製作するので、耳の感覚をフラットにしておかなければなりません。MDR-EX800STは普段用のイヤホンとして安心して使えます。
» イヤホンMDR-EX800STのページ(ソニーミュージック)

★ エンジニアたちが現場で聞いている音
実際にはスタジオには必ず、精密に調整されたリスニングルームがあって、基本はそこのスピーカで再生した音を聞きながら作業しているそうです。しかしながら望ましいリスニング環境にいないときや、上の例のように遠方どうしで確認し合うときなどに、ヘッドホンMDR-CD900STは最後の拠り所になります。

また、最終判断はリスニングルームのスピーカの音で決定するにしろ、作業のときどきで、ヘッドホンMDR-CD900STでモニタリングするそうです。少なくとも、このヘッドホンで聞いて気づくような異常(高音のざらつきなど)は放置しておけない、とのこと。

★2 オーディオ業界のメートル原器
標準(スタンダード)の価値は、その妥当性ではなく、みんながそれを標準だと認めた、という事実そのものにあります。標準は標準だからこそ標準なのです。

私は子どもの頃、初めて手にした1メートル物差しをかざして(大きすぎるなあ……70cmくらいが1メートルだと便利だろうに、なぜこれが1メートルなんだろう)などと考えたことがあります。これがいかにも子どもっぽいナンセンスであることは、誰でもわかることでしょう。

Amazon.co.jpのレビューに「ほんとうは低音に乏しい」「作り物っぽい音」などのコメントも散見されますが。なんの意味もありませんし議論にもなりません。個人の所感なんてどうでもいい。ヘッドホンMDR-CD900STで聞く音が業界標準の音、フラットな音なのです。

★3 タンジェリン・ドリーム
私は自分の耳の感覚がおかしくならないように、イヤホンMDR-EX800STを使うようにしました。が、癖の強い音楽ばかり聞いていると、それはそれで偏ってしまいます。個人的には梶浦さんやダークウェイブなどの音楽が大好物なのですが。総じて高音域が強いので、長く聞いていると耳が高音寄りになります。

耳の感覚を元に戻すために、低音から高音までまんべんなく聞こえる――ある意味なんの特徴もない音楽をたびたび聞きます。その一つがタンジェリン・ドリームです。この選択が妥当かどうかは微妙ですが……私にとってはタンジェリン・ドリームの曲は、フラットに聞こえます。

ほんとうは毒にも薬にもならないイージーリスニングを聞くのがいちばんよいのでしょうが。さすがにそれは耐えられそうにありません。

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