音の定位 6
音楽を聴いているとき、楽器の音がどこで鳴っているように聞こえるか、というのを「音の定位」というそうです。パンを調整して音を左右に振りわけることはよく知られていますが、音の定位を決める要素はその「左右」を含めて「遠近」「幅」「焦点」の4つがあります。
左右はパンすればいい
音の定位を決める要素のうち「左右」については特別なエフェクタは要りません。どんなDAWでもそれぞれの音を左右に振りわけるパンを用意しています。パンのつまみを左に回せば左に音が寄りますし、右に回せば右に寄ります。
強いて言うならフェーズシフタ
強いて一つエフェクタを紹介するなら、フェーズシフタでしょうか。英語で綴ると "PhaseShifter" です。googleで探すときは "vst phase" で探してください。
mgPhaseShifter
私自身はmgPhaseShifterを使ったことはありません。コントロールパネルを見る限りふつうにフェーズシフタのようです。これで用は足りるでしょう。
» mgPhaseShifterの開発元ページ
フェーズシフタの実体は、1サンプル単位★1 で音を遅らせる超超ショートディレイです。
ちなみにエレキギターで使うシュワシュワ……というフェーザとは別物ですよ。
さてここで物理の話。
音は1m進むのに2.88ミリ秒かかります。私の頭の左側で鳴った音が、左耳に聞こえてから右耳に聞こえるまで0.54ミリ秒ほど遅れます。ということは逆に、両方の耳で聞こえている音の方側を0.0~0.5ミリ秒ほど遅らせると、音はその反対側に寄って聞こえます。パンは左右の音量バランスを変えて音を左右に振るのですが、フェーズシフタは音量バランスを変えずに音を左右に振ることができます。
フェーズシフタを使うと、音が自然な感じに左右に寄って聞こえます。音が頭蓋の外に出て聞こえる感じがします。パンほど強い効力がないので、私はパンとフェーズシフタを半々くらい使って音を左右に振るようにしています。
★1 1サンプル
DAWで音の波形をずっと拡大して見ていくと、最後にはギザギザの階段状になっているのを見ることができます。決してなめらかな曲線ではありません。このことががまさにデジタルである所以です。このギザギザの幅はDAWが表現できる最高精度で、これ以上に詳細に音の波形を表現することはできません。このギザギザの幅が1サンプルです。
フェーズシフタは、DAWが表現する最高精度で音を遅延させることができます。本来はM/S方式で録音した音声のM/Sの位相ずれを調整するという、神経質な用途で使います。
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