-- 倍音楽器(2) --

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2009年10月20日

倍音楽器、口琴 4

口琴(こうきん)は人間の口を共鳴胴に使う珍しい楽器です。口の前に持ってきて中心のバネを弾くとビーンと音がします。そのままではつまらない音ですが、口の中をいろいろ動かすとおどろくほど多彩に音色が変わります。

口琴だって協奏曲を弾きたいっ

口琴=びよよんだなんて悲しすぎる、倍音を使ってメロディーを弾くことだってできるんですっ。でも倍音に含まれない音程は出せなかったりして…ぐす。

それでも世界の多くの国々、モンゴル、トバ、キルギズスタン、ノルウェー等は口琴の不完全な音階に対して寛容でした。出る音だけ使って演奏すればいいじゃんという態度です。あるがままを愛おしむということでしょうか。

でも西欧にとってそれは我慢ならないことでした。楽器ならどんな曲でも演奏できてしかるべきなのです。鳴かせてみせようホトトギス、オレ色に染まれっ、てな感じなのです。写真はスイス、ドイツ、オーストリアで使用される口琴ホルダー。倍音の異なる口琴を集めればお互いの不足分をカバーして完璧な音階を出すことができるという発想です。

確かにこれならどんな曲だって弾けるでしょう。ベートーベンの師アルブレヒツベルガーは口琴のために協奏曲を書きました。
»口琴協奏曲変ロ長調

演奏はスイスのアントン・ブリューヒン。メロディーを途切れさせることなく口琴を取り替えていく様はまるで神業ですっ。アメイジングっ、ファンタスティックっ……

こういう「口琴でも弾けたっ」というアプローチは、どこまでいっても「まあでも所詮オモチャだよねっ」と切りすてられるだけのように思うのです。ノルウェーの口琴の曲などを聴くと、それこそどんな楽器でもマネできない、個性的な楽器なんだということがわかります。

「口琴でも弾けた」ではなくて「口琴だから弾ける」です。

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2009年09月30日

倍音楽器、口琴 3

口琴(こうきん)は人間の口を共鳴胴に使う珍しい楽器です。口の前に持ってきて中心のバネを弾くとビーンと音がします。そのままではつまらない音ですが、口の中をいろいろ動かすとおどろくほど多彩に音色が変わります。

いちばん口琴らしい音

いちばん口琴らしい音のする口琴ってどんなだろう。そんなことを考えました。
インドの口琴はリズム楽器です。ヨーロッパや中央アジアではメロディー楽器、サハや北海道では抽象的な心象描写の道具として演奏します。国や文化によって求める音が違いますから、1番2番を競うものではないと承知のうえで、それでも理屈をつけていろいろ想像するのは楽しいものです。テレビCMやバラエティ番組で口琴を初めて知った人は、これでどんな曲を演奏するだろうと想像するでしょうか?

  • ビヨヨーンというバネのような音
  • 楽器なんだからドレミファでメロディーを弾いて当然

…ビヨビヨいいながらメロディーを演奏する、これが初心者の想像する口琴の音に違いありません。

» きっとこんな音

これはノルウェーの口琴です。ちゃんとメロディーを弾いていますし、しかもこのビヨビヨ感はタダモノじゃありません。口琴でも弾けますという演奏ではなくて、口琴でしか弾けない演奏です。実際このビヨビヨ感は他の楽器ではまねできないでしょう。

ビヨビヨは口琴の真骨頂、でも自分で弾いてみると期待したほどビヨビヨ鳴りません。実は、口琴の本来の音はビーンという味気ない音です。ビョロエ~という強烈なこぶしは、演奏者が舌をいろいろ動かしてそのように演奏しているからなのです。口琴は口琴のように弾いて初めて口琴の音が出ます。

口琴にかぎらず、楽器は本体と演奏技法とワンセットで”楽器”です。

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2009年08月30日

倍音楽器、口琴 2

口琴(こうきん)は人間の口を共鳴胴に使う珍しい楽器です。口の前に持ってきて中心のバネを弾くとビーンと音がします。そのままではつまらない音ですが、口の中をいろいろ動かすとおどろくほど多彩に音色が変わります。

日本の口琴

ムックリは北海道のアイヌ族に伝わる口琴です。本来は笹だったと聞いてますが、竹の口琴ですね。本体を直接弾くのではなく紐を引っぱって鳴らすので、音を出すまでが一苦労です。鳴らし方は以下のサイトをご覧ください。
» ムックリ演奏教室

ムックリの演奏は基本的にリズムもメロディーもありません。ビンビンと単調に紐を引っぱるだけです。曲とはとても言い難い原始的な音色はなんとも呪術的で、北海道の真っ暗な原生林の中で弾いてると、それこそ何か呼びだしてしまいそうな感じ。

» ムックリの音

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2009年08月15日

倍音楽器、口琴 1

口琴(こうきん)は人間の口を共鳴胴に使う珍しい楽器です。フレームの丸い部分を掴み、細くなった先の部分を前歯に押し当てて固定して、フレームの間に通ったバネを弾くとビーンと音がします。そのままではつまらない音ですが、口の中をいろいろ動かすとおどろくほど多彩に音色が変わります。

鳴らすには少しコツが要りますが、わりとすぐに鳴らせます。びよよーんという口琴特有の音は他の楽器では代用が利きません。人によってはひどくハマるようです。効果音的な音しか出ないので玩具と思われがちですが、美しいメロディーも弾けますし、複雑な倍音を伴った高度な抽象音楽も演奏できます。まあどんな楽器でも奥は深いです。

写真はインドの口琴。口琴はユーラシア大陸全域に散在します。アジアには竹製の口琴もあります。
» インド口琴の音

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2009年02月10日

倍音楽器、ラッパ 4

倍音を強調して音程を出すラッパは、倍音に含まれない音程を出すことができません。ドレミファを不足なく演奏するために、なんとかして管の長さを変えて倍音の並びを変えてやる必要がありました。

あつめてみた

一番てっとりばやい解決はへたな細工をしないで、長さの違うラッパを必要なだけ集めてしまうことです。出したい音程に応じてラッパを取っかえ引っかえします。

図はマール社出版『楽器』から転載しました。「南アメリカの大トランペット」と説明があるだけで、ネットで調べてみましたがそれ以上の詳細は分かりません。でもこれだけの長さがあればかなり豊かな倍音が出るはずなので、2オクターブ以上出るのではないでしょうか。

つっこみどころ満載なこのラッパはマルチベルトロンボーンというそうです。サキソホンの発明者アントニー・J・サックスの作。音源のないのが残念。

なおマルチベルトロンボーンは浜松楽器博物館で実物を見ることができます。楽器の好きな人なら2時間は時間をつぶせるお薦め所、JR浜松駅のすぐそばです。
»浜松楽器博物館

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2009年01月10日

倍音楽器、ラッパ 3

倍音を強調して音程を出すラッパは、倍音に含まれない音程を出すことができません。ドレミファを不足なく演奏するために、なんとかして管の長さを変えて倍音の並びを変えてやる必要がありました。

コルネットは笛のように指穴のあるラッパです。指穴を開けると音響上の管の長さが短くなります。

指穴をあけてついでに曲げてみた

これはコルネット族で最も大型の楽器。16世紀末にグレゴリオ聖歌隊の男声低音パートを補強するために発明されたこの楽器は、その形状からセルパン(=大蛇)と名付けられました。ぐにゃぐにゃ曲がっているのは、そうでないと指穴に手が届かないからです。

オーケストラでは華やかな音のするチューバなどに役を譲りましたが、暖かい音色に魅了される人も多く、いまだに現役の楽器らしい。

»こんな音
»セルパンについて(英文)

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2008年12月13日

倍音楽器、ラッパ 2

倍音を強調して音程を出すラッパは、倍音に含まれない音程を出すことができません。ドレミファを不足なく演奏するために、なんとかして管の長さを変えて倍音の並びを変えてやる必要があります。

指穴をあけてみた

一つの解決はフルートやリコーダー等の笛のように、管に指穴を開けることでした。指穴を開けると音響上の管の長さが短くなります。図は指穴を持つラッパ、コルネットです。
※ 吹奏楽に使われる真鍮製のコルネットとは別物です。

»こんな音
»コルネットについて(英文)

ただ、コルネットの音程の出し方はラッパよりも笛に近いようです。

  • ラッパ…管の長さを変えて倍音の並びを変える
  • 笛…管の長さを変えて直接音程を変える

また音程が非常に不安定だとのこと。指穴どおりの音程が出ないそうで、ラッパに指穴を開けるというのは…あまりうまい工夫ではないようです。

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2008年11月10日

倍音楽器、ラッパ 1

どんな楽器の音にも無数に含まれている倍音。これら倍音のうち、一つを強く響かせれば音程に聞こえます。うまくやればメロディーだって演奏できます。このように倍音を使って音程を出す楽器は世界中にたくさんあります。

倍音楽器の代表格ラッパ

倍音で音程を出す楽器の代表格はラッパでしょう。
図はアルプホルン、長い木をくり抜いただけの素朴なラッパです。標準サイズでも3.4mの長さがあります。アルプホルンはアルプスの牧場で時刻を告げるために使われたもので、5mの管だと2km先まで音が届くそうです。
»こんな音

長いだけのただの管ですから、理屈では一つしか音が出ません。でも、唇を引き締めて少し強く吹くと音が裏返ります、つまり倍音が出ます。吹き加減で倍音の高さも変わるので、うまくやればメロディーを演奏することができます。世界中のラッパは全てこの原理でメロディーを演奏します。
ラッパの音はあれは全部、倍音の音です。

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2008年10月08日

倍音楽器、フヤラ

倍音でメロディーを演奏する珍しい笛、オーバートーン・フルートの中でもスロバキアのフヤラはすごいです。

なんといっても大きい、1.5~2mくらい長さがあります。長すぎるので構えると半分近く頭の上に突き出てしまいます。音だってすごいです、ソウルシャウトって感じ。指穴は3つしかありません。これはメロディーを弾くためでなく、倍音の並びを切り替えるのに使います。
»こんな音
»スロバキアのフヤラ

フヤラは世界楽器てみる屋で販売したい楽器の一つですが、もともと現地でも高価な笛のうえ、ユーロが高くてなかなか輸入する覚悟ができずにいます。

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2008年09月10日

倍音楽器、コンチョーヴカ

コンチョーヴカはスロバキアの羊飼いの笛です。スロバキアに限らず欧州で羊を飼っている地方ならどこでも同じような笛を見かけます。ハンガリー、ルーマニア、ノルウェー、ウクライナ…。国によって名前は違いますがひっくるめてオーバートーン・フルート(倍音笛)と言います。

オーバートーン・フルートは細長い柳の枝でできています。リコーダのように歌口が付いているので吹けば簡単に鳴ります。指穴は一つもありません、これで2オクターブ以上の音階をどうやって出すのでしょうか。

オーバートーン・フルートの音は非常に不安定です。少し強く吹くと簡単に裏返ります、つまり倍音が出ます。倍音は吹き込む息の加減によっていろいろな高さになります。また吹き口の反対側の端を指で塞ぐと音響上の管の長さが変わるため、出てくる倍音の並びが切り替わります。このように吹き込む息の強さと端の開閉によってさまざまな音程を出す仕組みです。
»こんな音
»スロバキアのコンチョーヴカ

オーバートーン・フルートの音階はその構造に因るため、どの国でも同じ、独特でエキゾチックな音階です。

ちなみに世界楽器てみる屋で販売しているPVC樹脂製のオーバートーンフルートはベトナムのクェンという竹笛のレプリカ。オリジナルはさる名古屋万博のベトナム館で購入したんだけど…クェンってふつう人名なんですよ。ネットで探してもクェンという笛は見つからないし、本当にクェンという名前なの?

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