-- カンテレ --

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ウィングカンテレの弾き方、概説2

ウィングカンテレは北欧フィンランドの新しい弦楽器です。
ウィングカンテレの弾き方教室第2回、ウィングカンテレという楽器について。
» 16弦ウィングカンテレで即興演奏してみました


カンテレは北欧フィンランドのお琴

カンテレは北欧フィンランドの伝統楽器です。木片をくりぬいて作った3角形の筺に数本の弦を張っただけの、原始的なお琴です。テーブルや膝に置いて、チャララーンと伴奏します。真冬のバルト海を思わせる寒々とした音色が特徴的です。

伝説では、フィンランドの英雄ワイナミョイネンが、大きなカマスの顎骨で竪琴を作ったのが始まりだとされています。

”5弦の琴を作ろう、永久の楽しみをもたらすものを”
”カマスの顎骨で胴を作ろう”
”カマスの歯で糸巻きを作ろう”
”馬のたてがみで弦を作ろう”

――叙事詩『カレワラ』の40章から――

ワイナミョイネンが竪琴を弾くと、そのあまりに美しい音色に、聴いていた人々はみんな涙を流したのでした。


新しいカンテレたち

数千年もの長い間、カンテレはフィンランドの民謡をこぢんまりと伴奏するだけのささやかな楽器でしたが、20世紀半ばから急激な変革を遂げました。

西欧のグランドハープやグランドピアノの影響を受けて、たくさんの弦を持つグランドカンテレが発明されました。

音域はほぼ5オクターブで、どんな調でも演奏できます。半音を鳴らすこともできます。グランドカンテレは大がかりなクラシック曲を独奏するのに使用されます…が、
本題ではないので、グランドカンテレの説明はこのへんで終わり。


サブカルチャーとしてのウィングカンテレ

一方で誰かがカンテレを肩から提げて、ギターのようにジャンジャンとかき鳴らすことを始めました。

おおかた、西欧のロックやポップスに憧れた貧乏な若者が、おじいちゃんの弾いていた古いカンテレを屋根裏部屋から引っぱりだして、ジャカジャカとギターの真似をしたに違いないのです。

カンテレの”ギター弾き”が定着するにつれ、カンテレ本体もそれに合わせて進化していきました。弦の数が10~11本に増えて★1 、左腕を支えるアームレスト(ウィング)が大きく張りだした形状になりました。エレキギターのようにピックアップの付いたタイプもあって、エフェクタを繋いでギュインギュイン鳴らせます。

若者のサブカルチャーから生まれた新しいカンテレは、『モダンカンテレ』 あるいはその形状から 『ウィングカンテレ』 と呼ばれるようになりました。(この連載記事ではウィングカンテレと表記しています。)ウィングカンテレは、カンテレの伝統的な演奏技法とギターの演奏技法が融合した、独特なスタイルで演奏されます。

★1 弦の数は10~11本
YouTubeの演奏動画で見かけるウィングカンテレ(およびその類の琴)は、10~11弦であることが多いです。人間の指の数が5本ですから、自在に扱える弦の最大本数はその倍の10本。コード奏法では西洋音階ドレミファソラシの半分の音を不要な音として左手で抑えるため。

YouTubeに見るウィングカンテレの演奏

カンテレの音に軽くディストーションをかけて、エレキギターのソロ演奏のような雰囲気を醸しています。演奏中にチューニングスイッチをひねってキュィィーンとチョーキングの真似をしています。


思いっきり歪めたヘビーメタルな音。ああもういっそエレキギター使えよって感じ。


これはフィンランドのカンテレではなくて、近隣国ラトビアのコクレ。不要な音を左手で抑えてギターのようにかき鳴らすコード奏法の妙技を堪能できます。五月雨に弾く左手の音が聴く人に空耳のメロディーを暗示する。ゲシュタルト心理学の錯覚を積極的に利用するこの奏法はちょっと珍しいです。

楽器があればもっと楽しい毎日
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