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民族音楽風 まど☆マギ『Salve, terrae magicae』

民族楽器の音を使って魔法少女まどか☆マギカの次回予告の曲 『Salve, terrae magicae』 をやってみました。

もともと練習用バグパイプの宣伝動画を製作していたのですが、伴奏パートだけできれいにまとまってしまったので、そのまま作品に仕上げました。

今回は私は何も楽器を演奏していません。だからこの作品で使っている音は、すべてMIDI音源――VSTi★1 の音です。それにしては笛の音などほんとうに吹いているようで、いったいどうしたら打ち込みだけでこんなリアルな音を作れるのでしょうか。その辺を踏まえて、今回使用したVSTiについて概説します。

Knagalis

シタールやバグパイプなど、ドローン音――ずっと鳴り続ける音が入る民族楽器の専門のVSTiです。アラブやエジプトなどで使われる特殊な音階を選んで使えるようになっていて、西欧音階ドレミファソラシドに乗らない違和感のあるメロディーがリアルな味付けになっています。

今回はトルコのウードを使いました。
ウード自体はドローン弦を持たない弦楽器ですが、ドローン音を応用して、特定の音が耳に残る癖の強い残響を表現しています。

Knagalisの特殊表現として、前に鳴らした音に重ねるように次の音を鳴らすと、フレットを押さえている左手をずいと滑らせるような音を出してくれます。ごくごく原始的なアーティキュレーション★2 ですが、ドローン音や特殊音階と合わさってなかなか本格的な雰囲気を醸してくれます。

D-Pro

百科事典的なVSTiです。
ピアノ、ギター、バイオリンなどポピュラーな楽器から、マウンテンダルシマーや尺八、はてはSF的宇宙サウンドまで、ありとあらゆる音を出すことができます。これ一つあれば作品をとりあえず形にできるという、重宝なVSTiです。

ピアノやギターなど、実在の楽器については生の音をサンプリングした音を使っているので、音はかなりリアルです。

何でも揃っている反面、一つ一つの音は表現力に欠けます。(音がリアルなことと表現力はまた別の話です。)説明書によると、細かくコントロールすれば高度な表現ができるらしいのですが……逆に言うとそのためには細かくコントロールしなければならないわけで、それは面倒というか。それは機械のすることで人間の仕事じゃないよね?というのが私の感覚です。

今回はブズーキの音を使いました。
ほんとうはトルコのサズを使いたかったのですが、聞いてみると本物と似ても似つかない貧相な音だったので、ブズーキで代用しました。ちなみにブズーキは複弦の4コースです。ギターは単弦の6コースですから、MIDIファイルのギターパートをそのまま使うと、なんだかギターみたいに聞こえます。ですからギターパートから2つの音を削除してブズーキを鳴らしました。音数の少ない弦楽器の音は、いかにもシルクロードっぽい雰囲気です。

ForestKingdom

ファンタジーな世界観にぴったりな楽器ばかりを集めた趣味性の高いVSTiです。
私にとっては「ああこれこれ!」という、なかなか的を射た楽器のラインナップでして、上のD-Proの次に使用頻度の高いVSTiです。

今回はウドゥドラム、木の実のガラガラ、ジングルスティックとブルガリアン・ドゥドゥク(ブルガリアのリコーダ)を使いました。

ブルガリアン・ドゥドゥクはずいぶん気合いが入っていて、アーティキュレーションを不使用のキーに割り当てています。写真の黄色い鍵盤がそれです。民族楽器の笛の音域はせいぜい2オクターブですから、これをピアノの鍵盤に当てはめたら、ほんの一部の鍵盤しか使用しません。そこで、余った鍵盤にアーティキレーションを割り当てるということをしています。たとえば低いドの鍵盤を押さえながら笛を鳴らすとぴょろぴょろ~と装飾音を入れます。低いレの鍵盤を押さえながら鳴らすとひょえ~と音をずり上げます。音の長さとベロシティ★3 、そしてアーティキュレーションで表情をつけると、まるでほんとうに笛を吹いているように聞こえます。

★1 VSTi
”VST規格の楽器”という意味で、早い話、パソコンにインストールして鳴らすソフトウェアのシンセサイザーのことです。MIDIキーボードをパソコンに繋いで、ふつうのシンセサイザーのように演奏することもできますが、それよりもSONARやProToolsといった音楽ソフトに組み込んで演奏するのが主な使い方です。おおざっぱに説明すると、音楽ソフトにピアノのVSTiを組み込めば、音符を打ち込んでピアノの音で自動演奏することができます。ギターのVSTiを組み込めば、ギターの音がします。

数万円もする製品からフリーウェアまで、けっこうな数のVSTiが存在します。フリーウェアのVSTiでも、すごい掘り出し物があったりします。ネットで探してみるといいです。

★2 アーティキュレーション
楽器を演奏するときの強弱、抑揚、表情、感情表現、といった意味です。上手にアーティキュレーションした演奏は、人間的で生き生きとしていて躍動感を感じます。反対にアーティキュレーションを欠いた演奏は、のっぺりとした面白みのないロボットのような演奏になります。なんとなく分かりますか?アーティキュレーションの善し悪しは、そのまま演奏の善し悪しに直結します。初心者の拙い演奏とプロの素晴らしい演奏の差は、そのままアーティキュレーションの差と言っていいです。

ちなみに西洋音楽の楽譜にはアーティキュレーションを記録できません。「とりあえず楽譜どおりに間違えず演奏できるようになりました」という初心者の演奏が聞くに堪えないのは、まさにここです。楽譜には音の高さと長さしか書かれていません。アーティキュレーションの説明はないので、どんなに楽譜どおりに演奏したところでぜんぜん足りないのです。なんだかロボットのような演奏になってしまうわけです。

プロも楽譜を見たところでそこの状況は初心者と同じですが。プロは自力でアーティキュレーションを加味することができます。音の高さと長さしかないぶっきらぼうなメロディーに、息継ぎやタンギング、音の強弱、装飾音など、ぜんぶの演奏技術を総動員してアーティキュレーションを付け加えます。

初心者丸出しの演奏から”ちょっと聞けるいい感じ”な演奏にランクアップするには、アーティキュレーションを意識した演奏ができるようにならなければなりません。っても今まで述べてきたように、なんとも漠然とした話です。音楽教室で先生に「もっとアーティキュレーションに気をつけて!」と注意されたことがあるかもしれません。これは「もっと上手に演奏して!」と注意しているようなもので、どうしたら上手に演奏したことになるのか分からない以上、意味のないアドバイスであります。

★3 ベロシティ
物理学では『速度』のこと、パソコン音楽では『勢い』『強弱』といった意味です。MIDI信号にベロシティという数値があって、大きな値のベロシティで音を鳴らすと強い音がします。小さな値のベロシティで音を鳴らすと弱い音がします。

強い音と弱い音、というのはそのままイコール大きい音と小さい音、ということではありません。ってもまあ強い音というのはだいたい大きな音ですし、小さな音は弱々しく聞こえますけど。実際、フリーウェアの手抜きのVSTiだと、ベロシティの大小に従ってそのまま音を大きく鳴らしたり小さく鳴らしたりするだけのことが多いです。(そもそもベロシティなぞガン無視でいつも同じ大きさの音で鳴らす、という割り切ったVSTiもあります。)

対して、高価な製品版のVSTiだと、たとえばピアノの音は、ベロシティが小さいと曇った小さな音がして、ベロシティが大きいとガツガツと鍵盤を叩く雑音を伴ったヒステリックな轟音がします。強い音と弱い音というのは、そいういう意味です。

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