フヤラの吹き方:概説
フヤラは全長1.7mの巨大オーバートーンフルートです。
ライブステージで強烈なインパクトを放つ見栄えする外観と咆吼のような音色。
フヤラの吹き方教室第1回。まずはさらっと概要など。
フヤラについて
フヤラはスロバキアの羊飼いたちが演奏する世界最大のオーバートーンフルート★です。
フヤラの全長は1.7m。長すぎるので抱えると1/3ほどは演奏者の頭の上に突き出てしまいます。
フヤラの指穴はたった3つしかありません。2オクターブの音域を、3つの指穴と息の強弱だけで表現します。もっと高い音になると指穴は役に立ちません。すべて息の強弱で吹き分けます。強く吹くほど高い音が出ます。この息の強弱によるメロディー演奏が、オーバートーンフルート★族の笛のいちばんの特徴です。
フヤラの音色は一度聞いたら忘れられない独特な音色です。大型客船の汽笛のような野太い低音。そしてマイクがハウっているような鋭い高音。
一部の先進的なアーティストだけに知られていたフヤラは、近年になって、その見栄えする外観と印象的な音色でもってワールド系のミュージシャンたちに広く注目されるようになりました。
基本的な注意
フヤラは木管楽器ですから、木管楽器全般の注意事項が当てはまります。
乾燥したフヤラは少しずつ吹いて慣らしていってください。
いきなり長時間演奏すると、息の水分を吸って膨張して割れます。買ったばかりのフヤラはずっと倉庫にあって乾燥しているので、最初の一ヶ月は一日一時間だけ演奏してください。それ以降は好きなだけ吹いていいです。半年も放置したようなフヤラも同じです、毎日少しずつ吹いて慣らしていってください。とうぜん水洗いは厳禁です。
フヤラは人間が快適に過ごせるような部屋に置いてください。
カビが生えるような湿気たところに置かないでください。のどが痛くなるような寒い乾燥した場所に置かないでください。炎天下に駐車している自動車の中に置かないでください。ヒーターやストーブの熱に晒さないでください。急激な温度変化に晒さないでください。持ち運ぶときはバッグに入れておくのが吉です。
ちょくちょく吹いてあげてください。
一般的に木管楽器は度々吹いてあげないと痛みます。半年放置した挙げ句にいきなり長時間吹いたりすると、割れます。
吹き終わったら分解してください。
組み立てたままでも一ヶ月程度なら大丈夫ですが。そのまま忘れて半年も放置したりすると、ジョイント部分が分解できなくなったりマウスピースが抜けなくなったりします。組み立てたままにしておくときは念のため、一週間に一度くらいはジョイント部分をひねって動くことを確認してください。
ジョイント部分は紳士的に扱ってください。
ジョイント部分は構造上、力に弱いです。くの字に曲げるような力をかけないでください。
★ オーバートーンフルートについて
笛を強く吹くと裏返って高い音が出ます…倍音(オーバートーン)です。強く吹くほど高い音が出るので、上手にやれば息の強弱だけでメロディーが吹けます。これがオーバートーンフルートの原理です。
オーバートーンフルートは主に東欧・中欧で見かける、木の枝や金属で出来た細長い笛です。羊飼いたちはこの指穴が一つもない笛で、息の強弱だけで巧みにメロディーを演奏します。
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コメント
フヤラ、とても素敵な笛ですね!
私はフトゥヤラという塩ビのフヤラもどきを吹いていますが
てみる屋さんのフヤラはさすがの美しさ!
うっとりしました。
憧れます!
フヤラってすごく独特のデザインだなと思うのですが、
ペルーにとてもよく似たモセーニョっていう笛があります。
フヤラとモセーニョってなにか関係あるのかなぁ?
って、いつも思います。
投稿者: みいこ | 2009年12月11日 02:42
みいこさん、コメントありがとう
みいこさんはいろんな笛をご存じなんですね。つか実際にいろいろ持ってるんですね。
職人技で製作された楽器のよさは、多くの楽器を知る人には分かる、といったところでしょうか。塩ビのフヤラは、私は持ってはいませんが知ってはいます。安価で使い勝手十分なのが魅力ですねー。
ペルーのモセーニョは単純に大型の笛だと認識していました。
あれってオーバートーンフルートなのですか。形の話であれば、クラシック楽器のバスーン(ファゴット)やバスフルートも同様の形をしています。大型の笛を作るとなると、Uの字に曲げた形がいちばん効率よいように思います。ラッパみたいに管全体を巻いたら…と思いましたが、木管で渦巻きは加工が大変そうです…
投稿者: すだれ | 2009年12月12日 03:33
すだれさん、お返事ありがとうございます!
話題を振りながら、
私はモセーニョについて詳しくは知らないんです・・・
スイマセン!
でも、モセーニョは形が似ているだけで
フヤラみたいに積極的に倍音を使うことはないんじゃないかなと思います。
音孔もフヤラより多いみたいですし。
2オクターブちょいぐらいは音が出るんじゃないかと思うので
まったく倍音を使わないわけじゃないとは思いますが。
でも、構造的にフヤラみたいな奏法も出来そうですよね。
Low-Dのアイリッシュフルートの全ての音孔にセロハンテープを貼って
開口を指で閉じたり開いたりしながら吹くと
ちょっと短かめのオーバートーンフルートとして使えますし、
モセーニョもやる気になればフヤラのScatterやWooshといった奏法が出来るのかも・・・?
あくまで推測ですけど・・・
話は変わるのですが、今日NHK教育の日本音楽コンクールを見てましたら、
作曲部門の作品でファゴット(だと思うんですが)で
ちょっぴりフヤラ的な音を出していました。
フヤラほどかっこいい音じゃなかったですが。
投稿者: みいこ | 2009年12月13日 00:15
> Low-Dのアイリッシュフルートの全ての音孔にセロハンテープを貼って
そうですね。そもそもうちで製作しているオーバートーンフルートがLowDとLowBbですし。
オーバートーンフルートの話が出てきたので言わせてください。
オーバートーンフルートは見た目いかにも楽勝で自作できそうに見えますが。もちろん何でもいいから音が出ればいい、というのであれば楽勝ですが。上から下まで音が出る、管の底をふさいだときに上から下まで音が出る、という品質を保証するとなるとけっこうシビアです。うちのフルートに使っている材料だと、LowDはちょっと短かい。LowBbよりももっと長い方がいいのですが、それだと手が管の底に届きません。
私は食うためにオーバートーンフルートを作りはじめました。
今では人間のコントロール限界まで倍音が出る品質に達しています。これとおなじ品質を求めるなら、自作するよりうちから買った方が結局は安くつきます。(見栄えは気にしない、何でもいいから音が出ればいい。というのであればもちろん簡単に自作できます。)
> モセーニョもやる気になればフヤラのScatterやWooshといった奏法が出来るのかも・・・?
っとかなり勉強してますねー。
ちなみにScatterというのはフヤラの演奏前後に挿入される「キキキキ…」という鋭い効果音のこと。Wooshというのは吹く息を急激に強くして「ブーゥワッ」と音を大きくする効果のことです。このへん含めて、メーカーのウェブサイトではフヤラのことについてみっちり説明していますが、ぜんぶ英語です。スロバキア語でないだけマシですか。そのうちぜんぶ日本語に翻訳してブログにアップしますね…そのうち。
投稿者: すだれ | 2009年12月17日 02:48