簡単な楽器ってどんな楽器?
この楽器は初心者でも演奏できますか?とお客さんからよく質問されます。
お勧めの簡単な楽器はありますか?という質問もね。
シェーカは振れば音が出る
簡単な楽器って、改めて考えてみると、なんでしょうか。
例えば街の楽器店で売ってる卵形のシェーカなんかどうでしょう?振ればシャカシャカと誰でもすぐに音を出せますよ。超簡単。でも、そういうのではないのでしょう?シェーカなんかマジで勧めたら、お客さんによっては怒りだしそうです。
シェーカは簡単な楽器というよりは単純な楽器とでも言いましょうか。パーカッションを嘗めんなよ!などと正論をかざされても、ごめん、これすぐに飽きますって。何より、友だちに見せびらかしても「あ、そう」で終わりそうなのが悲しい。
割のいい楽器・割に合わない楽器
「簡単な楽器・難しい楽器」ではなく「割のいい楽器・割に合わない楽器」と言い換えた方がはっきりすると思います。
簡単な楽器->割のいい楽器:
短い練習時間で人前で演奏できて拍手をもらえるようになる楽器
難しい楽器->割に合わない楽器:
長い練習時間が必要なのに人前で演奏しても拍手をもらえない楽器
どうでしょう。身も蓋もない表現ですが…人の願いをよく表していると私は思いますよ。少なくとも私自身は、初めての楽器を見たとき(これは割のいい楽器か?効率のいい楽器か?)みたいに考えてしまいます。お客さんの質問も、同じような意味だと理解しています。
実はオカリナは割に合わない楽器
私のこの考え方に沿うと、世間でいう簡単な楽器の多くは、実は割に合わない楽器――難しい楽器だということになります。卵形のシェーカとかね。
馴染み深いところでオカリナも、実は極めて割に合わない楽器です。
オカリナは鳴らすこと自体は簡単です。しかしながら感動的な演奏ができるようになるのに長時間の練習が必要★1 です。そしてそうやって上手になったところで、年末の宴会で披露しても、酔っ払いからは「あ、オカリナね」という扱いを受けてしまう。
これは楽器店や音楽教室のしつこい勧誘も悪いです。「誰でもすぐに吹けます!」みたいな登りやポスターをそこら中で見かけるでしょう。あれが裏目に出てる。
もちろんいちばんの原因は、聞く側に素養がない★2 ――オカリナの音の良し悪しが分からないってことなんですが。それにしたって、一ヶ月みっちり練習して臨んだ結果がぱらぱらの拍手では、がっかりしても仕方ないことでしょう。
そういう意味では、楽器演奏は上手下手よりも、曲目選びの方が重要です。分かりやすいところで幼稚園で子ども相手に演奏するなら、クラシックの大作をすらすら演奏するよりも、アンパンマンの方が喜ばれますよ、という。
これはそういうレベルの話。
★1 オカリナは長時間の練習が必要
そもそもたくさんのオカリナ教室が日本の津々浦々で繁盛してるってこと自体が、どれだけオカリナが演奏の困難な楽器であるか、の証明になってると思うのです。
★2 聞く人に素養がない
ひどいところで、デュエットオカリナ(同時に2つの音が出る、1人で合奏できるオカリナ)を吹いてみせたところ、音が2つ鳴っていることに気づかないお客さんがいました。
だから最初はふつうのオカリナのように1音から演奏を始めて(さあここから聞きどころですよ!)と大袈裟にオカリナを咥えなおすパフォーマンスまでして、2音で1人合奏を始める、という手取り足取りな演出が必要です。
ふつうの人ってマジでこういうレベルです。かく言う私も最近までクラリネットとオーボエの音の区別がつきませんでした…
楽器があればもっと楽しい毎日
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