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エレクトリック・バグパイプ『Douce Dame Jolie』

『Douce Dame Jolie(優しい美しい貴婦人)』は14世紀フランスの古い曲です。
高嶺の花に恋い焦がれる片思いの歌です。電子バグパイプで演奏しました。

電子バグパイプについて

電子バグパイプというのはつまり、バグパイプの形をしたシンセサイザです。 革バッグの中には空気の代わりに電子回路が詰まっていて、キーボードと同じようにラインケーブルを差して、アンプ・スピーカに繋いで鳴らします。「電子バグパイプ」というと、すぐに欠点として「音がショボい、作り物っぽい」ということが指摘されますが。でもその代わり、本物のバグパイプにはないたくさんの長所を持っていますよ。

  • メンテナンスフリー、スイッチオンですぐに演奏できる
  • どんな過酷な環境でもコンサートピッチで演奏できる
  • 音域が広く、半音も出せるしどんな調でも演奏できる
  • いろんな音色で演奏できる
  • ドローン管の本数やキーをいろいろ変えられる

たった一つの欠点とたくさんの長所。
これらを天秤にかけたなら、私はどうしても、本物のバグパイプより電子バグパイプに軍配を上げてしまいます。逆に「電子バグパイプの作り物っぽい音はとうてい好きになれない」という人もいるでしょう。でもですね、私がYouTubeでバグパイプ演奏の動画を見ると……上手な人は上手なのでOKなんですが、調子っぱずれの大音量で得意げに街道を闊歩する姿もあったりするわけです。そういうの無理、私には耐えられません。ピッチが外れているというのはもう、音色云々以前の問題なのです。そんなですから「作り物っぽい音に目をつぶってでも電子バグパイプを演奏しようか」という判定になってしまうわけです。

動画で私が演奏しているのは、ドイツのレッドパイプ社の電子バグパイプです。これは本物のバグパイプみたいに、息を吹きこんで革バッグを締めつけて音を出します。ちゃんと演奏しないと、本物みたいに音が止まったりよろけたりします。なかなか芸が細かい。

レッドパイプにはMIDI出力もあります。
今回はMIDIケーブルでパソコンと繋いで、VSTi(ソフトウェアシンセサイザ)のバグパイプ音源を鳴らしました。そうなんですよ、本体の音がショボいというなら、代わりに別の音源を鳴らせばいいのです!そんなふうに自由にスペックを拡張できるのも、電子バグパイプの長所です。
» レッドパイプの通販カタログ

VSTiのバグパイプ音源について

今回はVSTiのバグパイプ音源として、Soundbytes社のBAGPIPESを使いました。

他社のVSTiが本物のバグパイプを忠実に模したリアル指向の音源であるのに対して、これは昔ながらのシンセサイザです。ずらりとダイヤルの並んだ古風なコントロールパネルが懐かしいです。これも一応、本物のバグパイプをサンプリングした音を使っているのですが……他社のと比較すると、今ひとつリアルではありません。

でも私はけっこう気に入っています。シンセサイザですから、自分の納得いくまで思いどおりの音を作りこむことができます。幅広い範囲でピッチを変更できますし、ドローンの音も自由にミキシングできます。バッグを強く締めつけたときに音色はどう変化するか、ビブラートはどんな感じか、といったことも細かく調整できます。「誰も知らないどこかの国のバグパイプ?」みたいな音として使うなら、実に魅力的なVSTi音源なのです。
» Soundbytesのサイト

プログラマブルなMFXプラグイン

JFilterはMFX規格のプラグインです。

MIDIエフェクタとしてCakewalkやSONARで使えます。JFilterは変わったエフェクタで、ユーザが用意したJavascriptのプログラムに従ってMIDIデータ――つまり音符を加工します。どのように音符を加工するかは、それこそプログラム次第です。がんばってプログラムを書けば自動作曲だってできます。

とはいえ一般的な話として、大がかりな事をさせようとすればするほど、その分だけ複雑なプログラムを書かなければならない道理です。だからJFilter単体だけで見ると「なるほど、なんでもできる便利なエフェクタだということは分かった。しかし……実際に使うとなると、どうだろう」という評価になるかもしれません。やりたいことの一から十まで全部、自分でプログラミングするなら、そうでしょうね。

しかし、キースイッチ★1 を搭載したリアル音源や、Band-in-a-Boxのフィオリトゥーラ★2 と組みあわせると、小さなプログラムで大きな成果を上げることができます。私は今回、以下の目的でいくつかのプログラムを用意しました。どれも学生の課題にもならないような簡単なプログラムでしたが、作品として全体的に演奏が一段とリアルに仕上がりました。

  • 私がレッドパイプで演奏したMIDIデータの整形
  • ベースのメロディをビオラ・ダ・ガンバ用に整形
  • リコーダのメロディを人が演奏したように加工

まあこのくらいなら、数時間の手作業でもできてしまうことですよ。
しかしプログラムのいいところは、一度用意してしまえば、後は未来永劫、ボタン一発で瞬時に作業が完了してしまうということです。今後の音楽作品の製作において大幅な時間短縮になりますし、疲れもストレスもなく、製作意欲が持続させることができます。これはアマチュア――自分の作品完成に責任がなく、いつ投げだしてもいい身分である私にとって、とても大切なことです。

因みにJFilterの作者は「誰も使ってくれない……」と自分のブログで嘆いていますが。
いえいえいえ、そんなことはありません!JFilterは私にとって、既に製作活動の生命線です。これが使えないとたいへん困ります。バージョンアップを継続して、将来はぜひ64ビットWindows8にも対応してほしいところです。
» JFilterの開発元サイト-ひだちのいろの日記

★1 キースイッチ
ピアノは別格として、楽器の音域はふつう広くてもせいぜい3オクターブ程度。対してMIDIではずっとずっと広い音域を表現できますから、例えばギターのリアル音源であれば、MIDIで使う音域はほんの一部のみで、ほとんどの音域は使われないままになります。

それはもったいないので、使っていない音域の音――出そうにもギターでは出せない音域の音に、いろんな機能を割りあてることを考えます。例えばC0のキーを押しながら音を出すとカッカッとカッティング奏法する。D0のキーを押しながらだとキュィーンとチョーキングする。E0でハンマリングオンして、F0でプリングオフ。こうしておいて、これらのキーを次々に押しながらギターの音を出すと、チャカチャカキュィーンと実に多彩でリアルな演奏をしてくれるわけです。これをキースイッチといいます。

キースイッチはリアルさを売りにしているVSTi音源の多くが採用しています。
よく出来たリアル音源の音はもう、素人の耳では本物の演奏と区別がつきません。今はそういう時代です。

★2 フィオリトゥーラ
自動伴奏ソフトBand-in-a-Boxが搭載しているたくさんの機能のうちの一つで、ベタ打ちの音符をまるで人が演奏したように加工します。

同様の原始的な機能としては、昔からランダマイズというのがあります。各音符の発音のタイミングや強弱を僅かにランダムに散らせることによって、あたかも人が演奏したようにする、という機能ですが……効果のほどはどうでしょうか。人の動きって確かにふらふらしてはいますが、ランダムではありませんからね。

一方でフィオリトゥーラは、音符どうしの前後の繋がり方や、小節の中での位置、強拍と弱拍、演奏スタイルなどまで考慮するようで、本当にかなり人が演奏したように加工します。少なくとも私が自分で工夫していろいろ音符を打ち込んだよりも、よっぽど生き生きした演奏になります。それもボタン一発で。

このフィオリトゥーラと上で述べたキースイッチ搭載のリアル音源を組み合わせると、MIDI打ちこみ作品でリアルな楽器演奏を簡単に実現できます。

楽器があればもっと楽しい毎日
» 変わった楽器、珍しい楽器の販売は世界楽器てみる屋

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コメント

バグパイプ、というかリード楽器の宿命として音色が嫌いな人が結構いますので、イヤホンつければ外部には音が聞こえないredpipeは便利そうですね。無音で指だけ高速に動いてる光景は結構シュールですけど。

ピアノを練習するうるさい音もよく問題になりますものね。静かに練習することできる、というのは大きなメリットです。

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